週明けに美里と話したころには、愛沙はとしのことなどすっかりどうでもよくなっていた。
―わたしには他にも言い寄ってくる男がいるはずなんだもの。
自信を胸に、休日は早速結婚相談所に向かった。
名古屋駅から徒歩圏内のビルの一画に店舗を構える相談所。
ハイステータスな会員とのお見合いが可能のようだ。
―今日申し込まなくてもいいもんね。とりあえず、話を聞くだけでも…。
結婚相談所ということで、フレアスカートで清楚さを演出する。
淡い黄色のスカートを揺らして、いざビルの中に足を踏み入れた。
「いらっしゃいませ」
年配の女性が出迎える。
顔に刻まれたしわが、経験の深さを物語っているようだった。
「入会を検討しているのですが…」
と言うと、そのまま個別ブースに案内された。
婚活コンシェルジュだという女性は、林と言うらしい。
張り付いた笑顔を崩さず、差し出されたお茶を愛沙が飲むのを待ってから話し始めた。
「この度はご来店ありがとうございます。ご入会を検討されているとのことですね」
「はい。なかなか出会いが無くて。その…、結婚相談所に入会すると、結婚できるものなのでしょうか」
「お金もかかることですし、不安になるお気持ちもわかります。ですが、ご安心ください。当社は3カ月以内に成婚される方が多く、長くても6カ月以内には退会される方がほとんどですよ」
半年以内の成婚率も90パーセントを超えているらしく、結婚相談所はそんなにもすぐに結婚できるものなのか、と驚いた。
「ですが、希望する条件にマッチする人はいるのでしょうか」
「そうですね。では、中込様のご希望をおうかがいしてもよろしいでしょうか。実際に登録されている会員様のお顔はお見せできないのですが
、ご希望とマッチする会員様がどれほどいらっしゃるのか、お見せすることはできます」
愛沙は林に希望を伝える。
年収は最低でも1,500万円、身長175センチ以上の大卒。
年齢は28歳から37歳で検索をお願いしたが、できるだけ若いほうがいいです、と伝えた。
あとは、愛沙の情報を入力して…。