昔の知人が結婚した、という報(しら)せが耳に入ると必ず相手がどんな人か調べた。
〝なんだ、大したスペックじゃないじゃん″
と思っては、わたしならもっと良い男を捕まえられる、と心の中でほくそ笑んでいた。
20代前半は自由奔放に恋愛をしてきた愛沙だったが、ある出来事が彼女の結婚への意識を本気にさせた。
彼女が社会人4年目の夏、実家にある1本の電話がかかってきた。
「愛沙、真奈美が婚約者連れてくるって!」
母親が電話を切るなり突然興奮したように言った。
電話の相手は、どうやら2つ違いの妹、真奈美だったらしい。
妹とは幼いころから双子に見間違われるほどそっくりだった。
目鼻立ちの整った、くっきりとした顔の美人姉妹。
近所でもべっぴんさんだと評判だった。
幼い頃から華やかで人目をひいた愛沙とは違い、真奈美は大人しくて目立たない子だった。
友達も多くどちらかといえば行動的な愛沙の影に隠れて、どこへ行くにも付いて来る。
誰かにからかわれたら愛沙が守ってあげた。
その割に真奈美は自分の意見を内に持っていて、芯がはっきりしているところがあった。
高校まで愛沙と一緒の学校だった真奈美は、名古屋の有名私立大学を学校推薦で合格し、在学中は海外留学などを経験した。
留学中に英語をマスターし、都内にある会社の貿易関係の仕事に就いたと聞いていたが…。
―その真奈美が結婚…?
一体どのような男性を連れてくるのだろうと、愛沙は好奇心いっぱいだった。
真奈美は約束の時間ぴったりにやって来た。
白い花柄のワンピースにヒールのないパンプス。
「お父さん、お母さんただいま。お姉ちゃんも久しぶりだね」
無邪気に笑う真奈美は、少し見ない間にまた一段と大人っぽくなったみたいだった。