NOVEL

絶対美脚を持つ女 vol.5~人を惹きつける脚~

ナルミの横の席に座った端正な顔だちの男とは?

ついにその正体か明かされる‼

 


前回▶絶対美脚を持つ女 vol.4~不審な男の正体~

はじめから読む▶絶対美脚を持つ女 vol.1~夢を語る女~

 

「分かる?」と聞かれるまでもなく、ナルミは「あ!」と声を上げそうになる口元を急いで手で覆った。

 

目を見開き、言葉をなくして見つめるばかりのナルミに、男はクッと喉の奥を鳴らして笑った。

 

「キャップ取るまで分かんなかった?」

「全然……。私、テレビほとんど見なくて」

 

なるほどね、と男は得心したように頷きながら、またキャップを被りなおす。

 

キャップを取ると、新幹線の車内の光でさえ味方にして、まるで造形物かと思うほどの顔立ちに綺麗な肌が際立つ。また被ってしまうのがもったいないと思った。

 

「……本物?」

「よく言われるけど、本物だよ」

 

やけに顔の整った若い男の正体は、今人気の俳優だった。

 

テレビを見ないナルミでも、男の顔はよく見かける。ナルミのよく参考にするファッション誌にも登場するし、大きなポスターが街中に貼ってあるのも見たことがある。

一時は自分の美脚を武器に芸能界を目指していたナルミだったが、オーディションで振るわなかった若いころの苦い経験が今でもしこりとなり、意識的にテレビを見ない生活を送っている。そんなナルミでさえ知っている有名人が、なぜか今、ナルミの隣に座っているのだ。

 

「急に変な若者が来たと思ってた。脚ばかり見るから」

 

ナルミが思わずそのままの感想を口にすると、男は吹き出した。

人懐こい上に笑い上戸らしい。ナルミが勝手に思い描いていた芸能人とは違う種類である印象を受けた。

 

「いや、ほんとなかなかこんなに綺麗な脚のお姉さん見ないからさ」

「……芸能界でも?」

「ここまではいないね」

 

 気持ちいいくらいの即答に、ナルミは気をよくする。

 

「で、しかもおれがチェックしていたエルメスのそのブーツ。日本人で似合う人なんかいないと思っていたよ。誰かからのプレゼント?」

「まぁ。たまたま知り合った人があなたと同じように脚フェチで、履いてほしいって勝手に送ってきたの」

 

ブーツをよく見えるように脚を反対側に倒すと、男が「いや、ほんと綺麗な脚だよね」とまた唸った。