その美貌により男性からアプローチされることも多く自由奔放に恋愛を謳歌してきた愛沙
だったが、ある日彼女の結婚への意識に火をつける出来事が起こる!
名古屋の高級住宅街で生まれた愛沙は、幼いころから経済的に何不自由ない生活を送っていた。
両親は代々続く高級老舗料亭を営んでいた。
中高は一貫校、大学は都内の有名私立女子校に通い一人暮らしをしていたが、就職を機に地元へ戻ってきた。
両親、特に母親は男女交際に関して厳しく、家を出る高校まで男性と付き合うことを禁止していた。
門限も18時だという中込家ルールが存在した。
ルールも母親の干渉も特に嫌だとは思わなかった。
事実、学校中のマドンナだった彼女にアプローチする男子は多かったが、その誰とも付き合うことはなかった。
なぜなら、学生の愛沙には揺るがない願望があったからだ。
―将来は大人の男性に養ってもらうんだ。
高校生の彼女にアプローチする男性の多くは、学生という身分だった。
そのため、お金のない学生など彼女の眼中にはなかった。
大学になると学校の勉強はほどほどに、美容とファッションにかけるお金が格段に増した。
美意識も高く可愛かった愛沙は街を歩けばナンパの嵐だった。
大学生になり、親元を離れ、初めての彼氏ができた。
相手は大手銀行マンだった。
愛沙にとって初彼がその彼であること自体、大した喜びではなかった。
背も高くて爽やかなエリート。
アプローチされたときに承諾した決め手はそこだった。
〝きれいだね。″
〝君を連れて歩いていると気分がいいよ。″
という言葉も、愛沙の承認欲求をくすぐり、気持ちが良かった。
付き合って3週間ほど経った頃、初彼には愛沙から別れを告げた。
もっとランクの高い男性にアタックされたからだ。
若くて綺麗な愛沙を求める男性はいくらでもいた。
大学時代は付き合っては別れてを繰り返し、就職のために名古屋へ戻ってきてもそれが変わることはなかった。