「ありがとうございました」
お互いにお礼を言って終了する。
はあ、とため息をつく。
長かった。
これがあと数回続くと思うと、愛想笑いがもつかな、と心配になった。
「こんにちはー」
続いて現れた男性に、愛沙の疲れは吹き飛んだ。
次の相手は、愛沙が目を付けていた男性だ。
2人目にしてお目当ての男性に当たるなんてついている。
「こんにちは」
好みの男性を前に、愛沙は努めて鷹揚な態度で話した。
名前は、としさん。
愛沙は、プロフィールの名前は愛称でよかったんだな、と本名を書いたことを後悔した。
見た目は爽やかなアナウンサー系。
シャツからのぞく細マッチョの腕がセクシーだ。
プロフィールを確認すると、身長176センチ、年収1100万円。
年齢は35歳で愛沙と同い年だ。
ジムの経営をしているらしい。
「体、鍛えられているんですね」
「そうなんです。鍛えるのが好きですし、一応ジムを運営しているので…」
「わたしも運動好きなんです」
さりげなくアピールする。
「最近は女性の方も多いので、ぜひ一度当店にいらしてください」
にっこりと微笑むとし。
「中込さんはそのままでもスタイルいいですが、運動お好きなんですか」
「好きというより、鍛えないとすぐ太っちゃうんで…」
主に身体の話でほとんどの時間を費やす。
「としさん、よかったら連絡先交換しませんか」
残り時間がわずかなのを察して慌てて愛沙が声をかける。
「ああ、いいですよ」
愛沙が言わなければ交換していなかっただろうか、ポケットから携帯を取り出す。
「ありがとうございます」
愛沙は満面の笑みで返した。
結局連絡先を交換できたのはとしだけで、初めての婚活パーティーは滞りなく終了した。
Next:4月12日更新予定
学生時代、学校中のマドンナだった愛沙にアプローチする男子は多かったが、その誰とも付き合うことはなかった。なぜなら、愛沙には揺るがない願望があったから。