NOVEL

選ばれない女 vol.1~婚活パーティー~

「ありがとうございました」

お互いにお礼を言って終了する。

 

はあ、とため息をつく。

長かった。

これがあと数回続くと思うと、愛想笑いがもつかな、と心配になった。

 

「こんにちはー」

 

続いて現れた男性に、愛沙の疲れは吹き飛んだ。

次の相手は、愛沙が目を付けていた男性だ。

2人目にしてお目当ての男性に当たるなんてついている。

 

「こんにちは」

好みの男性を前に、愛沙は努めて鷹揚な態度で話した。

名前は、としさん。

愛沙は、プロフィールの名前は愛称でよかったんだな、と本名を書いたことを後悔した。

見た目は爽やかなアナウンサー系。

シャツからのぞく細マッチョの腕がセクシーだ。

 

プロフィールを確認すると、身長176センチ、年収1100万円。

年齢は35歳で愛沙と同い年だ。

ジムの経営をしているらしい。

 

「体、鍛えられているんですね」

「そうなんです。鍛えるのが好きですし、一応ジムを運営しているので…」

「わたしも運動好きなんです」

さりげなくアピールする。

 

「最近は女性の方も多いので、ぜひ一度当店にいらしてください」

にっこりと微笑むとし。

 

「中込さんはそのままでもスタイルいいですが、運動お好きなんですか」

「好きというより、鍛えないとすぐ太っちゃうんで…」

主に身体の話でほとんどの時間を費やす。

「としさん、よかったら連絡先交換しませんか」

残り時間がわずかなのを察して慌てて愛沙が声をかける。

 

「ああ、いいですよ」

愛沙が言わなければ交換していなかっただろうか、ポケットから携帯を取り出す。

「ありがとうございます」

愛沙は満面の笑みで返した。

 

結局連絡先を交換できたのはとしだけで、初めての婚活パーティーは滞りなく終了した。

 

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学生時代、学校中のマドンナだった愛沙にアプローチする男子は多かったが、その誰とも付き合うことはなかった。なぜなら、愛沙には揺るがない願望があったから。