NOVEL

玉の輿vol.5~謀略の章~

張り巡らされた罠に落ちるのは誰か?

謀略無尽に向けられる牙が突き刺さる…!

既に、投げられた債が地を這う時、伸るか、反るかの、心理戦が始まる!

 


前回▶玉の輿vol.4~羨望の章~

はじめから読む▶玉の輿 vol.1~珠子の章~

 

あれは、まだ小学校2年生の時だった。

授業中に、隣の席のイワキ君が突然泣いた。

後ろの席だったユカリが、何やらイワキ君にちょっかいを出して、泣かせたのだ。

 

担任の先生が何事かと駆け付け、事情を聴くとユカリは言った。

『イワキ君の事を、生頼さんが好きだって言ったら、泣いちゃったんです』

珠子は確かにイワキ君の顔立ちが好みで、密かな恋心を躍らせていた。

 

その時、担任はこう言い放った。

『なんでそんな事を言うの!イワキ君が可哀そうでしょう!』

クラス中が静まり返った。

返す言葉も見つからず、珠子の身体は硬直した。

心底驚愕すると、声も涙も出ない。

 

ただ、感情の回路が一色に染まる。

『悔しい…!見返してやる!!』

 

その頃から、珠子は『玉の輿』の語源になった『お玉さん』に憧れを抱くようになった。

庶民の娘でも、幸せになれる。

ユカリやイワキ、強いてはこの担任にぎゃふんと言わせる存在になってやる。

 

誰もが自分にひれ伏すような、女に!

『なりたい』ではない。

 

『なる!』と決めたのだ。

 

学生時代のモテ男は、スポーツに長けているか、ファッショナブルな男だ。

でも、男の価値は、そこではない事を早々に認識した。

 

本当に女を幸せにできる男。

それは、血筋だ!