心はぎりぎりのところで、均衡を保っているはずだ。根本的な解決となるのは、人と比べないようにすること…?
だが、今の香織の状況と性格を考えると、それも難しそうだった。
「子供は、大きくなったら変わるわ。まだ4歳だもの。それに、拓海くんには良いところだってたくさんあるでしょう?」
「はい、まあ、それはそうなんですけど…。」
「人生でつらい時間は、そう長くは続かない。今を終えたら、『ああ、そんなときもあったな。』って思えるはずよ。香織さんのしんどい気持ちは、わたしもわかる。そういうときは、ほら、お菓子食べよう!」
その場の空気を変えようと、パンパンと軽く手をたたく。
香織は少しの間うつむき、つぶやく。
「そうですね…。こういうときこそのお菓子ですもんね。」
ふっと笑い、椅子から立ち上がる。
「お菓子、とってきますね。京子さんも食べませんか?」
「ありがとう。いただくわ。」
香織の笑顔は、思ったよりも穏やかなものだった。
「主人は、二人目を考えているんです。でも、こういう状態じゃあ無理って言い合いになってしまうんです。」
菓子皿にスナック菓子を山盛りにして、つまみながら話す。
「ご主人は子育てに協力的なの?」
「子供は好きなんでしょうけど、仕事仕事の人ですからね…。ほとんどわたしが家事育児はしています。」
「それは、二人目は無理よ。」
「わたしも子供は好きなので、ほしい気持ちはあるんですけどね。京子さんはすごく母性的ですが、お子さんおられるんですか。」
何気ない質問でも、京子の胸は静かにずきんと痛んだ。
「いえ、わたしたち夫婦には、子供はいないのよ。…実は、わたしは再婚してるの。」
京子は痛みが静まるように、そっと胸に手を当てた。
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若菜、里香、香織のその後 それぞれの進みだした未来とは!?