NOVEL

勝ち組妻 Vol.9 ~「うまくできない!!」完璧主義の主婦と京子の過去~

 

「…笑わないで聞いてくださいね。さっきの買い物袋は、全部お菓子です。ストレスがたまると、たくさん買って食べちゃうんです。誰にも見つからないようにすっぴんマスクで出かけます。スリルがあって、気づいたら癖になっちゃいました。」

 

ちらりと見た袋の中には、たしかにスナック菓子が入っていた。

 

「そうなのね。普段きっちりしてる分、息抜きの時間があってもいいわよね。甘いものも食べたら落ち着くもんね。」

「そうなんです。わかってくださる方がいて、安心しました。」

 

香織の表情が少し明るくなった気がするのは、気のせいではないはずだ。

 

「他のお母さんたちには、こんな弱音はけないです。みんななんでもそつなくこなしているし、なんだかバカにされそうで…。昔からの友達にも、わかってもらえないんです。すみません、こんな話…。」

「香織さんは、自分に厳しいのかもね。『すみません』が口癖になってる気がする。もっと自分のしていることに自信をもってもいいと思う。あなたはよくやっているわ。」

 

香織はバツが悪そうにする。

 

「ありがとうございます。でも、言われてみればそうかもしれません。自分のしていることに自信がもてません。ふがいなさにもイライラします。」

「完璧にするなんて、無理よ。きちんとしてる奥様だって、みんななにかしらの不得意なことはあるんだから。」

 

うーん、と納得いきそうでいかないような表情をする香織。

 

「…といっても、いきなり気にするなと言われてもそれも無理よね…。」

 

香織は、今の状況を抜け出したいと思うほど追い詰められている。

頑張っても報われない。

誰を頼ることもできそうにない。

自分で乗り越えるしかない。