「あの女性は誰なの?」
渦巻く疑念と裏切られた妻の想い、夫の真意と真実は。
はじめから読む▶年収一億超えの妻たち vol.1~結婚記念日なのに~
「どうぞ、遠慮なさらずに」
「ええ、お邪魔します」
自宅を訪れた安奈さんが、頷きながら私の言葉に従う。
今日、彼女が自宅に来た理由は私がママ会を開き、彼女を招いたからだ。
そして、ママ会を開いた理由はただ一つ、夫のことを相談するためである。
こうして、私と早苗さんが作った手料理を、来客である安奈さんに振る舞いながら、ママ会は開催された。
一見すれば、順調に進行しているように見えたママ会だったが、その状況には大きな問題が一つ・・・。
その問題とはいかにして、夫の話を切り出すかであった。
他愛もない家庭内の話なら切り出すのに躊躇はない。
しかし、事が事だけにそう簡単にはいかなかった。
(どうやって切り出したらいいんだろう…?)
安奈さんに悟られないように笑顔で、他愛もない話に花を咲かせつつも、心の底では話の糸口を見つけようと四苦八苦する。
そんな時・・・。
「そろそろ本題に入らない?」
(え…?)
まるで心に中を見透かされているかのように、彼女がそう告げてくる。
でも、どうして?
「あの…なんで分かったんですか?」
「だって、美佳さん、直ぐ顔に出るんだもの」
「そ、そう…です」
その一言に思わず、俯く。
まさか、顔に出ているとは・・・。
もしかして夫にも、見透かされているのでは?
一瞬、そんな思いが脳裏を過ったものの、今はそのような事を不安がっている場合ではない。
慌てて、心の中に渦巻く不安を振り払いつつも、私は何とか問いに答えようと口を開く。