NOVEL

夫婦のカタチ vol.9~名古屋観光~

あの日の集合場所と同じ名古屋駅からスタートし、まずは名古屋城に向かった。

この場所で城をバックに撮った写真が2人の初めてのツーショットだった。

 

「同じ場所でもう一度撮ろっか」

康平と写真を撮るとまだ4年しか経っていないのに、2人ともかなり大人びたように見えた。

 

名古屋港水族館に向かう。

お昼は人気のイタリアンを康平が予約していてくれた。

初デートで私が行ってみたいと言いながらその日は予約でいっぱいで入れなかったあの店だ。

窓際の水辺が見える個室席を用意してくれたのもきっとスマートな康平による計らいだろう。

今でもあの頃と変わらずに、ちょっとした会話を忘れずにいてくれる康平の優しさを感じた瞬間だった。

 

そして私たちは名古屋港水族館へ。

私の大好きなイルカショーの時間になんとか間に合った。

席に着くと周りは子供連れの家族で賑わっている。

イルカが跳ねるたびに子供たちは大喜びし、そんな姿を見て私は

「今度勇希にも見せてあげたいね」

と思わず康平に言った。

 

それから魚がたくさん泳ぐ大水槽やクラゲの幻想的な空間、ペンギンの餌やりなど

どれを見ても楽しいと思う一方で頭の端の方では勇希のことを考えていた。

けれど康平がせっかく私のために連れてきてくれたデートで、帰りたいと言うことができなかった。

今日はこの後、ディナーを食べてミッドランドスクエアの屋外展望台から夜景を見て帰る予定だ。

きっと帰りは夜遅くなってしまうだろう。

私は水族館を出る頃には楽しんでいるふりをしながらも、心の中では勇希が心配で気が気ではなくなっていた。

 

 

Next:81日更新予定

次回最終章!フレンチレストランでディナーを食べる奈緒美と康平。だが奈緒美は息子・勇希のことが気になりソワソワしてしまう。その様子に気付いた夫の康平の反応は?