NOVEL

夫婦のカタチ vol.9~名古屋観光~

-変化と成長-

 

綾香さん夫婦とバーベキューに行ったあの日から

私たち夫婦の関係はコツコツと変わっていった。

 


前回:夫婦のカタチvol.8~転機となる日~

はじめから読む:夫婦のカタチ vol.1~失ったもの~

 

2人で新たに話し合って、まずは仕事との両立で無理のない範囲で康平は勇希と向き合うことにし、できることから始めることにした。

 

残業して遅く帰るのが当たり前だった康平は、今では20時までに家に帰り、夕飯を家族3人そろって食べている。

仕事は寝る前に書斎で済ませているが、勇希がイヤイヤ期で泣き出すとリビングまで飛んできて抱っこする。

 

今までの康平からは考えられないことばかりで、まだ1週間も経っていないのに私には康平の誠意が強く感じられた。

 

「今度オムツの替え方とかお風呂の入れ方もちょっとずつ教えてよ」

すごく前向きな康平は以前と比べてとても生き生きして見えた。

 

そんな変わっていく康平を見て私も新たな自分になりたいと少しずつ思い始めていた。

 

これから先の10年を想像した時に、子育て一筋で頑張るのもいいかもしれない。

けれど働きながら子供を育てる逞しい綾香さんという存在に出会い、過去に仕事を頑張っていた自分の姿が蘇った。

そんな仕事への自分の気持ちに気づきながらもこの2年間、勇希の存在を言い訳にして自分に向き合ってこなかった。

 

あの時は仕事を辞めたくなかったのに、康平に言い出せない自分の弱さから自らのキャリアを捨ててしまった。

けれど今の私なら康平にはっきりと気持ちを伝えられる気がする。

 

それに何よりも自分も働くことで仕事と育児を両立する康平の気持ちをこれからもわかっていられるような気がした。

 

夕飯の時間になり、康平に仕事への復帰の想いを伝えた。

すると康平は

「奈緒美が辛くならなければ、俺はいつでも応援するよ」

と温かく背中を押してくれた。

 

私も康平もこの2年間で掛け違えてきたボタンを1つずつ直していくように、コツコツと気持ちを言葉にしていくようになった。

言葉にすればお互いに伝わって、お互いが自然と尊重し合える。

「本当の夫婦の形」に少しずつなりつつあった。