「これ!種類これだけあるみたいだし、みんなやってるようだし、安全じゃないかな。」
画面を覗いて森田が感心したようにつぶやく。
「へえー、最近はこういうのがあるのね。知ってた?」
井中は頷き、幸枝は首を横に振る。
「アプリの存在は知ってたけど、なんか、こわいよね。どんな人がいるかわからないじゃん。わたしはまだ、手はだしてないなー。」
「わかります。知らない人と会って、何かあったらこわいですもんね。」
幸枝も同意する。
男性を3人に絞った時点でアプリは退会しているし、顔写真も出していないし、身バレすることはないだろう。そうこうしているとパスタが次々と運ばれ、皆の関心は腹を満たすことにうつっていった。
本名も知らない、勤め先も知らない男性たちと会う。
3人の男性を、仮にA、B、Cとしよう。彼らとは、仕事終わりに会う約束をしている。
この3人は、月、水、金と間隔をあけて名古屋まで会いに来てくれることになっている。土日にわざわざ時間を使って会うほどではない。
相性がよければ次に繋げるが、そうでない場合は切る。お互いのプライベートには干渉しないし、例えどこかで会っても知らないふりをする。そういう約束だ。
今日は、月曜日。Aと会う日だ。
待ち合わせは、千種区にあるラブホテル。もしものために、相手とは入店をずらすことにする。もちろん、A、B、Cそれぞれ別々のホテルだ。
仕事が終わり、ホテル付近に着いたのが19時50分。待ち合わせには少し早いが、ホテルの駐車場で時間を潰せばいいだろう。
〝着きました″
駐車場につくとほぼ同時に、Aから連絡がきた。車から出て受付をし、連絡を返す。
〝入って来てください″
初めて見たAは、どこか疲れた様子のサラリーマンだった。ひょろひょろと痩せた体に、黒のスーツが浮いて見える。顔には生気がない。目礼して二人で部屋へ向かう。エレベーターの中で簡単な挨拶をすませる。