NOVEL

引きこもり女の裏側 vol.6 ~心にぽっかり空いた穴~

「これ、お土産。」

 

幸枝は、昼休憩に職場の数人とランチに来ていた。人気イタリアンのお店で、前々から予約を取ってやっと入店できた。料理を待っている間に、先輩の森田が、つやつやとした色鮮やかな玉が入った箱を目の前に差し出す。

森田が言うには、発酵さしすせそ羊羹「五季」というお菓子らしい。

 

「わー!これ、楊枝でつつくと弾けるんですよね!ありがとうございます!」

 

斎藤が手を合わせながら感謝する。

 

「東京に行ってきたの?例の彼氏?」

 

もうひとりの先輩である井中がおしぼりの袋を開けながら問う。

 

「そう。この間のGWでね。」

「いいなー。彼氏いる人は。わたしなんか、このGWひまでひまで。」

 

自分に話題が降りかかってくるのを恐れながら、幸枝は水を一口飲む。

 

「自分の好きなことできていいじゃん。彼氏がいても喧嘩するしめんどくさいよー。」

「森田さんって、どういうことで喧嘩するんですか?」

 

斎藤が口を挟む。

 

「うーん、大体お金のことかな。結婚したいからお金貯めてって言ってるのに、趣味にばっかり使うんだよね。」

「まあ、何を重要視してるかって、なかなか合わないよね。」

 

井中が同意する。

 

「河合さんは、最近恋愛とかどうなの?」

 

会話に参加しない幸枝を気遣ってか、井中が話を振る。

 

「わたしは…いい人がいたらしてみたいなって思いますけど、出会いもないですしね。」

「そうよね~。わたしもいい人がいればな~。」

「最近マッチングアプリとか流行ってるみたいですよ。出会いないならどうですか?」

 

斎藤が携帯を操作して画面を見せる。画面にはたくさんのアプリ名と、サイトへ誘導するURLが貼られている。