浮気相手にしても、不倫相手にしても、どんなに愛を注がれたって「2番目の女」ということに変わりはない。
今付き合っている彼女に、結婚している奥さんに愛情がなかったとしても、世間から見たら彼女や奥さんが1番だってことは誰だってわかる。2番目の女から抜け出すには、自分を1番に想ってくれる相手を見つけなければならない。
浮気相手や不倫相手が1番目の女に昇格するのなんて、レアケース。幸せになる近道は、新しい恋を探すことなのかもしれない。
「彼女とは別れるって言ってるし」
「奥さんとは離婚するって言ってるし」
そんな口先だけの言葉を根拠もなしに信用したって幸せになれやしない。
幸せになりたいのなら、自分だけを愛してくれる素敵な人を見つけよう。幸せになって「2番目の女」なんて呼ばせないために。
大輔くんへの気持ちに確信を持ったからか、その日のデートはドキドキが止まらなかった。
「友梨さん、次はペンギン見よ」
「友梨さん、14時からイルカのショー始まるらしいよ」
「友梨さん、お腹空いてない?」
大輔くんの口から発せられるひとつひとつの言葉に胸が高鳴って、もっと一緒にいたいという気持ちが芽生えてくる。まるで学生に戻ったときのようなキラキラした気分で、私は大輔くんとのデートを楽しんだ。
2人で過ごす時間はあっという間だった。気付いたら辺りは暗くなり、水族館の中の人も少なくなっていた。
閉館のアナウンスが流れ、私と大輔くんは自然と顔を見合わせる。今日のデートも、これで終わりだ。
「帰ろうか、もう遅いし」
そう呟いた私は出口へと足を進める。すると、大輔くんが私の手を握る強さを強めた。思わず足を止めて大輔くんの方を見る。
「あの、俺と付き合ってくれませんか?」
周りには誰もいない暗闇の中で告げられる言葉。もし昼間の人が多い時間帯だったら、周りにいた大勢の人にこの告白を聞かれていたかもしれない。だけど、今は閉館間際の誰もいない時間帯。まるで世界が私と大輔くんの2人きりになったみたい。
きっと、大輔くんに告白をされてから私が口を開くまでの時間は数十秒。だけど、私にはその時間がとてつもなく長く感じた。まるで時間が止まったみたいだ。
「私で良ければ、よろしくお願いします」
ずっと前を向けず、恋愛から目を背けてきた私。そんな私の手を取って、前へと進ませてくれた大輔くん。
頭の中から、完全に翔太との思い出が消えたわけではない。思い出という思い出は大してなかったけど、ずっと「翔太」という存在が私を縛り続けてきた。でも今回はそれを掻き消して、しっかりと大輔くんに向き合うことができた。
大輔くんとなら、幸せになれる。
そんな確信を持った私は、告白にOKを出した。大輔くんは、嬉しそうに私の手を握った。水族館を出るときの私たちは、恋人同士になっていた。
大輔くんと別れて家に帰った私は、すぐさま後輩に連絡をした。もしかしたら大輔くんからも連絡がいくかもしれないが、私からしっかりとお礼を伝えたかった。
「大輔くんと付き合うことになった、色々本当にありがとう」