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「じゃあそろそろお開きにすっか」
石田が伝票を確認する。気持ちよくほろ酔いがまわったころだ。
「そうだな」
俺はスマホを見た。まだそんなに遅くなっていない。今から加澄さんのところへ行けそうだ。
メッセージを打つとすぐに返信が来た。
わかった、と一言だけだ。
その様子を三村が見ているのが気になったが、さりげなくスマホをポケットにしまう。
「純くん、もう一軒行けない?飲み足りなくて」
石田が会計をまとめて払ってくれている間にそう言ってくる。
「いやいや、まだ月曜でしょ。今日は帰ろう」
はっきりと、しかし口調は優しく言ったつもりだ。
三村は少し悲しそうな顔をしたがこれ以上言っても駄目だと思ったのだろう。
「そうだね、じゃあまた今度」
そう言った。
2人と別れ、足早に加澄さんの部屋へ向かう。
忘れ物はなんだっけ。でもそんなことはどうでもよく、ただ彼女に会いに行きたかった。
酒のせいでどこかぼんやりしているのがわかるが、自然と足早になる。
衝動的に動いているとわかっていながらも止められない。
この先、やはり彼女に会いに行くべきではなかったと後悔することになるとは知らずに。
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加澄と関係をもってしまった純だが、その一方で三村とも付き合うことに。週末は三村とデートを重ね平日の夜は加澄の部屋に行く―そんな関係が続いていた。