NOVEL

マザーズカースト vol.7~恐れていたこと~

オーディションはまさかの健太がセンターという驚きの結果だったが、その後のママ友同士の関係は特にギクシャクすることもなく続いていた。

 


前回:マザーズカースト vol.6~センター争い~

はじめから読む:マザーズカースト vol.1~新たな土地へ~

 

-オーディションの裏で-

 

そんなある日、小百合さんからランチのお誘いを受けた。

ママ友の会はだいたいいつも千奈美さんからの声がけで集まっていたので、珍しいなぁと思いながらもお店に向かった。

お店もいつも行く店とは違う和食屋さんで、席に向かうと小百合さんを含めた3人のママさんが待っていた。

 

「少人数でランチもたまにはいいでしょう。ここのお刺身の定食は結構人気なのよ」

お料理をオーダーして食事をしながら小百合さん達はいよいよ本題というように話し出した。

 

 

「そういえばこの前のオーディション、入会してまだそんなに経たない健太くんがセンターに抜擢って凄かったわ!だいたい発表会は佳奈ちゃんがセンターになることがほとんどだったからみんな驚いていたのよ」

「健太くんもどこかに個別レッスンお願いしたのよね?私たちにもよかったら講師の先生、紹介してくれないかしら」

 

どうやら話を聞く限り、オーディションでセンターを狙う子達は直人先生のレッスンとは別に講師を雇い、個別のレッスンを行なっているというのだ。

お稽古のためにお稽古するなんて、我が家にはそんな余裕もなければそこまでオーディションにかける気持ちもなかった。

 

「うちは元々恥ずかしがり屋な性格の健太が少しでも前に出られるようになればと思ってダンスを始めた程度だったので。個別レッスンとかそういう特別なことは特にしていないんです」

そう伝えても3人は

「本当に?オーディションの健太くんを見ていてもとても恥ずかしがり屋だったとは思えないわ」

「ダンス以外に何か音楽教室に行ってらっしゃるの?」

「もったいぶらず、ここだけの話で何か通っているなら教えてほしいわ」

と口をそろえて言ってくるのだった。

「本当に習い事は直人先生のレッスンだけなんです。私も正直、こんな結果になるなんて思ってもなくてとても嬉しいですけどかなり驚いているんです」

そんな返事ばかり繰り返すしかなく、小百合さん達も諦めた様子でランチはお開きとなった。

 

-おそろいの衣装-

 

子供達が発表会に向けてレッスンに励む中、直人先生から衣装の準備の説明があった。

「毎回発表会では、親御様で協力して衣装をご準備いただいております。衣装係のママさんを3名決めていただき、その方々主導でみなさん協力してご用意お願いいたします」

すると先日ランチに誘われた小百合さん達3名がそろって係に立候補した。

「今回はせっかくですので、みなさんで衣装の買い出しに行ければと思います!日程などの詳細は今週中にご連絡いたします」

 

その日からしばらく経っても小百合さん達から買い出しに関するアナウンスはなく、来週かなぁと連絡待ちをしている間に次のレッスンの日を迎えた。