NOVEL

【新連載スタート】マザーズカースト vol.1~新たな土地へ~

斉藤結衣は5年前に結婚し、都内の戸建て住宅に家族3人で仲良く暮らしていた。そんな中、突然決まった夫・雄一郎の名古屋への転勤。

名古屋への移住を決断し、住居は超高層デザイナーズマンション。新たな暮らしを前に胸の高鳴りを抑えきれない結衣を待ち受けていたものとは!?


 

結婚から5年。私、斉藤結衣はとても仲の良い少し歳の離れた夫・雄一郎と4歳になったばかりの健太と3人で、都内に暮らしていた。

 

結婚して親元を離れてからの住まいは雄一郎の実家が所有する築15年ほどの戸建て住宅だった。同じ頃に建てられたであろう注文住宅が立ち並ぶ住宅街には、両親たちと同世代が多く住み、私たちのような子育て世代は珍しかった。私も当時は働いており健太は保育園だったことから、ご近所のママ友という関係は経験がなく、ご近所付き合いはあいさつ程度だった。

 

そんな中で決まった雄一郎の名古屋への転勤。健太もまだ小さく、いつ東京に戻って来られるかもわからないので、これを機に私は仕事を辞めて専業主婦となった。そして家族揃っての名古屋移住を思い切って決めた。

 

先に名古屋へ行っていた雄一郎が決めた物件はまさかの超高層マンションだった。築浅のデザイナーズマンションで家賃はかなり高いはずだが、雄一郎の働く製薬会社からも近く、役職と共に給料も上がったため奮発して選んだ物件だった。

 

広いエントランスとラウンジ。入居者専用エリアには緑豊かなプライベートパークがあり噴水で水遊びをする子供の姿も見られた。生まれて初めてのマンションでの暮らし。

(同じような子育て家族はいるかなぁ)

(ご近所のママ友はできるかなぁ)

(せっかく専業主婦になったんだから、健太も4歳になったことだし、お稽古事でもはじめてみようかなぁ)

新たな暮らしを前に私の胸は高鳴っていた。

 

-引っ越し当日-

 

引っ越しは暑い夏の日、幼稚園や保育園が休みとなるお盆休みの初日に合わせてすることにした。

 

広いエントランスには引越屋さんのカーペットが轢かれ、東京での暮らしで揃えたお気に入りのデザイナー家具たちが次々とトラックから運び出される。

 

手際の良い作業に健太と2人見入っていると1人の女性が話しかけてきた。女性は30歳ほどで私より23歳年上だろうか。雑誌から出てきたようなお洒落なファッションとスタイル、片手にぶら下げたデパ地下で買ったであろう買い物の荷物が目を引いた。

 

「あら。新しく入居されるんですか?」

「はい。引越しでお騒がせしてます」

「いいえ、お気になさらないで。どちらから来られたの?新しいお住まいは何階?」

「東京から越して来ました。うちは10階です。マンション暮らしが初めてなので高いところでの生活がなんだか楽しみです」

10階からならとても景色が綺麗でしょうね。お引越し作業頑張ってくださいね」

 

そう言うと軽く会釈して、女性は引越屋さんの養生がされていない隣の高層階行きエレベーターに乗り込んでいった。