NOVEL

【新連載スタート】マザーズカースト vol.1~新たな土地へ~

-初めてのママ友-

 

引っ越しの荷解きがひと段落してやっと部屋からの景色に目をやったのは、2日後のことだった。

 

私は10階からの景色はどんなものだろうと期待していた。けれどカーテンを開けるとたしかに空は広く感じられ、高さもあって景色は綺麗だ。

だが少し離れた隣の高層マンションが何よりも目を引いた。私たちのマンションよりは高さが低いものの10階以上はあるため視界に入ってしまう。

 

ふと一昨日、エントランスで会った女性に言われた

10階からならとても景色が綺麗でしょうね」

という言葉が頭をよぎる。

 

それでも戸建て暮らしに慣れていた私には思っていたものとは少し違えども、街の喧騒から離れた住まいがとても魅力的で気に入った。

 

2日間、引っ越し作業ばかりで健太の相手をろくに出来ていなかったので、さすがの大人しい健太も飽き飽きしているのが伝わってきた。雄一郎もさすがに疲れが溜まった様子で昼寝でもさせてあげたいと思い、今日は初めて健太を連れてプライベートパークへ行ってみることにした。

 

プライベートパークはパンフレットで見ていたよりも広く、噴水やちょっとした遊具まで揃っていた。だがお盆でみんな帰省しているのだろうか。パーク内には私たち以外誰もいなかった。なので健太と2人でしばらく遊んでいると、1組の親子が現れた。

 

「こんにちは」

とこちらから挨拶すると、少し気の弱そうなママさんは若干驚いた表情を見せ、こちらに軽く会釈した。

 

仲良くなれるチャンスだと、ここぞとばかりに私は

「私、斉藤結衣と申します。息子の健太4歳です。一昨日10階に引っ越してきたばかりなんですけどお年も近そうですし、よかったら一緒に遊びませんか?」

と言ってズカズカと話しかけた。

 

そんな私に初めは人見知りをしている様子だったママさんも子供の話を互いにするうちに、すっかり打ち解けた。

 

ママさんの名前は真理子さん。息子の杜人くんは健太と同じ4歳、専業主婦で3人暮らしという共通点があった。通わせる予定の幼稚園も一緒である。子供同士もとても気が合うようでこの日から私たちはパークで会うたびに一緒に遊んで、連絡先を交換してからは2回ほど近所のカフェでランチを楽しんだ。

 

初めてのママ友という関係が私にはとても嬉しく

(これがマンション暮らしの魅力なのかぁ)

とまで思っていた。

 

この時までは。

 

 

Next:824日更新予定

9月に入り結衣の息子・健太の幼稚園への通園が始まった。バス停に着くと10組ほどの親子がすでに待っており、母親たちの視線を否応なしに感じてしまう結衣であった。