NOVEL

婚活物語―ハイスペ男と結婚したい―vol.3〜格下女への敗北〜

「私、高橋さんとお付き合いをさせてもらっている中山悠里です」

衝撃の一言だった。お付き合いをさせてもらっている?何で?こんな地味な女が?

私は頭の中が真っ白になった。

 


前回▶婚活物語-ハイスペ男と結婚したい―vol.2〜突然の別れ。信じていた彼の裏切り〜

はじめから読む▶婚活物語―ハイスペ男と結婚したい―vol.1~彼との出会い~

 

 

「待って、どういうこと…?」

 

藁にもすがる思いで斗真に聞く。きっと斗真にとってこの女は遊びだ。斗真が本気で好きなのは、私だけなのだ。

 

「…仕事なんて嘘に決まってるだろ」

 

そんな私に対して斗真の口から告げられた言葉は、衝撃だった。今まで聞いたことがないくらいの低い声。それがきっかけになったかのように、斗真の口からは次々に私への悪口が出てきた。

 

「デートの金は全部俺に出させるし、プレゼントに高いものねだりすぎ」

「何も気遣えないし、お前は男のこと舐めすぎ」

「そもそも俺のこと、ちょっと格好良いATMくらいにしか思ってないだろ」

 

そしてしまいには、私の本性を突かれてしまった。

「お前が好きなのは俺じゃなくて、俺のステータスだろ」

 

 

斗真の顔を見ると、怒りよりも呆れた表情が出ていた。そして隣にいる女は「そんなに言わなくても」と斗真の肩を叩きながら宥(なだ)めている。女に宥(なだ)められて斗真も冷静になったのか、一度ため息を吐いて静かに続けた。

 

「最初は仕事している姿とか見て、周りに気を遣える良い子だと思ってた。俺へのアプローチも凄くて、素直で真っ直ぐな子だと思って付き合った。だけど付き合っていくうちに、お前が好きなのは俺じゃないってわかった。だから別れたいって思った」

 

淡々と告げられる斗真のセリフ。私は反論できなかった。全て、事実だったから。私は斗真を手に入れた時点で、満足してしまった。釣った魚に餌をあげなかった。

 

「ごめん、俺らデート中だからさ」

 

そう言って斗真は女の手を引き、私に背中を向けた。そのときだ。女の髪がなびき、耳がチラリと見える。そして、耳に光っていた小ぶりのイヤリング。それには見覚えがあった。

 

「あ、それ妹のだわ」

 

私が斗真の車で見つけたイヤリング。そのときに気づいた。私は浮気されていたのだ。そして、私は捨てられた。あの女に負けたのだ。

 

私は二人の姿が見えなくなっても、ただ二人が歩いて行った先を見つめて立ち尽くすことしかできない。道の真ん中で立ち尽くす私は、完全に浮いている。

 

そんなとき、LINEの通知音がなって我に返る。LINEの相手は、先輩だった。

「まだ?そんなに今日仕事溜まってた?」