NOVEL

婚活物語―ハイスペ男と結婚したい―vol.3〜格下女への敗北〜

そっか、今日先輩と約束していたんだ。こんな状態でセフレに会いにいくなんて、最低だと思われても仕方がない。だけど、今の私は誰でも良いから寂しさを埋めてもらいたかった。

 

「ごめん、途中で知り合いに会って話してた。もうすぐ着く」

送信すると、「了解、待ちくたびれたんだけど()」と秒で返事が返ってきた。社内では一目置かれている先輩。だけど、斗真と比べたらどうしても劣ってしまう。

 

ホテルに着くと、バスロープ姿でベッドに腰掛けてテレビを見ている先輩。ドアが開いた音を聞いて私の方へと顔を向けると「遅いよ」と言う。

 

「別にいいでしょ。体だけの関係だし」

 

バッグを置き、先輩の隣に腰掛ける。いつもだったらすぐにシャワーを浴びるけど、斗真に会ったからか何もする気が起きない。

 

いつもとは違う私を見て、先輩も不思議そうな顔をしていた。だけど、心配なんてしてくれるわけがない。だって私はセフレだから。

 

「今日はいつもとは違うプレイ?」なんて言いながら私の服に手をかける先輩。そんなつもりなかったけれど、もうどうにでもなれって思った。いっそ、先輩に抱かれ潰れてしまえば、全て忘れることができるだろうか。

 

 

私は先輩の首に腕を回して言った。「めちゃくちゃにして」と。一気に雄の目になる先輩。そりゃ、こんな可愛い子にこんなこと言われて欲情しない方がおかしいよね。荒々しく口付けられながら、ベッドへと沈められる私の体。長い夜の始まりだ。

 

目が覚めると、隣には裸で眠る先輩の姿。そして、私の身を纏うものも何もなかった。時刻は4時過ぎ。変な時間に目が覚めてしまった。

 

先輩を起こさないようにベッドから降りると、ベッドの下に脱ぎ捨てられた私の服。そっか、昨日はシャワーを浴びずに抱かれたんだった。

 

寝起きでまだ完全に起きていない頭のまま、浴室へ向かう。ホテルのチェックアウトまでの時間はまだある。きっと、先輩が起きたらまたするのだろう。

 

シャワーを出して昨日一日の流せなかった汚れを洗い流す。このまま、斗真への気持ちも流れてしまえば良いのに、なんて思った。思わず、昨日のことを思い出して涙が出た。止まらない涙。自分がなぜ泣いているのかすら、わからない。

 

すると、浴室の扉の開く音がした。慌てて振り返ると、そこには先輩の姿。きっとシャワーの音で目が覚めたのだろう。

 

「一緒に風呂入る?」

 

シャワーを浴びている私を後ろから抱きしめる先輩。前に回された手の動きがだんだんいやらしくなる。今までだったら、お風呂に一緒に入るなんて絶対に嫌だった。私の中で恋人以外とお風呂に入ることが考えられなかったから。

 

だけど、昨日の出来事で、私の頭は上手く働かなかった。完全に先輩のペースに飲み込まれていた。私の声とシャワーの音だけが浴室に響く。

 

「可愛いよ、莉奈」