同棲相手・雅と部下・島田との光景が目に焼き付いて離れない加奈恵。
加奈恵と雅の関係はいったい…!?
はじめから読む▶女の顔に化粧をするとvol.1 ~思いがけない知らせ~
◆真鍋加奈恵
インターホンが鳴った。私はソファから身体を起こす気が全く起きなかった。酒が入っていたこともある。身体は火照り、気だるさが全身を覆う。
暫くすると、カギを開ける音がした。ドアの上下に二つのカギがあるため、いつも雅はカギを迷っている。しばらくもたついた後、ドアの開く音がした。コンビニの袋がこすれる音がする。何か買ってきたのだろう。冷蔵庫を開ける音がして、何か漁っている音がする。しばらくして、リビングの扉が開いた。
「…おかえり」
「ん?ただいま」
私は雅のほうも見ずにソファに横たわっている。
雅は私の様子を見ながら、机とソファの間に身体を滑り込ませてテレビを見始めた。
片手にはチューハイを持っている。5%のアルコール度数の低い酒だ。しかし、その酒をすこし口にしただけではないのがすぐにわかるくらいに、雅からは酒の匂いがしていた。
「今日、遅かったね」
「ん、そうか?いつもよりも早いと思うけどなぁ」
雅からの返事は生返事だった。私への返答よりも、全く関係のないテレビの先で喋る芸人のやり取りのほうが、彼にとっては重要なようだ。つまみのサキイカを口に含み、ときどき酒を口に運んでいる。
「ねぇ、私たちさ。何もないよね」
「そうだね」
「お互い仕事終わったら缶のお酒買ってきて、テレビを見て。たまの土日も適当に時間潰して、時々セックスして」
雅には私の声は聞こえているのだろうか。それとも、無視しているのだろうか。