NOVEL

「Lady, Bloody Mary」~女の嫉妬~ vol.6

謎の水商売男子アオと聖奈の出会い、謎の青年アオとは何者?

そしてまさかの光景に、紗夜は静かに絶望する。

ついに、運命の歯車が回り出しはじめる。


 

前回:「Lady, Bloody Mary」~女の嫉妬~ vol.5

 

 

ネオンと撒き散らされたゴミと、どこかから悪臭も漂ってくる。

そんな路地裏を訳も分からず、見知らぬ薄暗い道路を細い手にしっかり繋がれながら、聖奈は背中姿しか見えない明るめの茶髪マッシュ頭の男性を見つめ走っていた。

 

喧騒から抜け、とあるコンビニの前でやっと止まった。聖奈とアオと名乗っていた男性ははあはあと互いに息を落ち着ける。

交差する視線、アオはコンビニに入るとすぐ出てきた。

 

「あざっしたー」

やる気のない店員の声が後ろで響く。

 

「お姉さん、これ。とりあえず落ち着きな」

はいと手渡されたのは小さな水のペットボトルだった。アオも同じ水の蓋をぱきっと開けるとぐいっと飲み干した。

 

「こんな時間にこの辺ふらふらしてたら、そりゃスカウトも来るっしょ」

「...余計なお世話よ」

 

聖奈はいつもの愛想良い顔などどこへやら、アオに不機嫌な表情をあからさまに見せた。

 

 

「ま、俺には関係ないけど」

「なら、なんで助けたのよ、ってあんた誰?」

 

やっと勢いよく蓋を開けると、ぐーっと水を喉に流し込んだ。全力で走った後の水は身体に沁みた。

はーっと大きくため息を吐くとやっと気持ちが落ち着いてきて、少し身体が震える。

普段、夜更けに栄の繁華街に1人でやってくるのは初めてで、あんな風に逃げられない状態だったこともなかった。

いつも誰かが一緒だったから。

 

「...そんなに怖かったの?」

 

聖奈はそっと目を伏せながら、頷いた。

 

「まあ、お姉さん。この辺ではあんまり見かけない感じだしなぁ」

 

頭を軽く掻きながら、アオはすっかり空っぽになったペットボトルをコンビニ前のゴミ箱に放り込んだ。

 

「大通りまで案内するよ、タク捕まるっしょ」

 

なんで初対面なのに、なんで構ってくれるのか分からなかったが、今、一人になるのはとても怖い。聖奈は静かにアオについていく。

側から見たら、ホストと同伴女性みたいだった。

車通りが多いところで、アオが手を上げるとちょうど空車の黒タクシーが止まった。

 

「乗って」

 

聖奈が静かに乗ろうとする、するとすっと一枚の名刺が手渡された。

 

「聞いてたと思うけど、俺、あそこのビルの4階でバーやってるから。また飲みたくなったら来て」

「いきなり営業しないで、あ、タクシー出してください」

 

バタンと扉が閉まり、車が夜の街に飛び出していった。

それをじっと見送るアオ、一息ため息をつくとスマホを見つめボタンを押して明かりを消した。