大切なプレゼントを贈りたいと
リナに連れられ【ラナンキュラス】へやってきたしょーこママ。
しょーこママは佐伯明人の過去を知っていた・・・?
~白薔薇~
〝いつも、あなたを想っています″そう伝えたくて、ただ時が過ぎて行った。
遅すぎたのかもしれない。でも、何もしないではいられなかった、夜に咲く赤い薔薇。
深夜3時半を迎えた土曜日の錦三丁目の繁華街は、それぞれの思惑を胸に賑わいを見せていた。
【ラナンキュラス】も注文が多く、赤切れた手にハンドクリームを塗りこみながら、佐伯もやっとひと段落して、閉店の準備を始めていた。
入り口の自動ドアーが開く音と共に、リナのご機嫌な声が店内に響いた。
「こんばんは~マスターいる?」
金曜と土曜だけは、指名が入れば閉店時間まで勤めていると聞いていたので、驚きもせずに佐伯がひょっこり顔を出す。
「ほらほら、ママ~こっちこっち!この人が、イケメンマスターの佐伯さんです!」
リナが店内に腕を絡ませて連れ込んできたのは、今は亡き川島直美さんを彷彿とさせる、年齢不詳の美魔女だった。
「いらっしゃいませ」
佐伯がニッコリと笑う。
「こんばんは。…リナちゃんったら、すっかり酔っちゃって…あら?」
リナはお構いなしに〝ママ″と呼ぶ女性を佐伯の前に押し出して、紹介してきた。
「うちの店のしょーこママ。美人でしょう?」
「…はい…」
しょーこママが何かを言いかけたが、佐伯は構うことなく「お綺麗な方だ」と続けた。
錦三丁目で店をしているママならば、佐伯の過去を知っているのかもしれない。
こういう表情をされるのは、慣れていたが、しょーこママはそんな佐伯の反応を見てすぐに何事もなかったように取り繕い無難な挨拶を交わし合った。
「今日はね、ママが大切なプレゼントを贈りたいって言ってたから連れてきたのよ!」
リナは構うことなくご機嫌で、大分酔っていることが分かる。佐伯は、パイプ椅子を2脚出してきて、二人に勧めた。
「で、どのようなご注文ですか?」
「ママ!このイケメンマスターね、本当に良いアレンジをするのよ?任せていいと思う!」
佐伯は舌を巻くリナを横目に、空笑いをし…しょーこママの影を帯びた作り笑いを伺っていた。