NOVEL

錦の花屋『ラナンキュラス』Vol.6 ~昔の自分~

行き場所をなくし、花に身を潜める少女。

リナは昔の自分をそこに見た。リナの女として母親としてあるべき姿とは一体?

 


前回:錦の花屋『ラナンキュラス』Vol.5 ~二度と戻ることは出来ない過ち~

 

~リューココリネ~

行き場所をなくし、花に身を潜める少女。リナは昔の自分をそこに見た。

暖かく人を信じる心を忘れそうなこの町で、女として母親としてあるべき姿とは?

シングルマザーのリナが導き出した独白は、慎重な愛だった。

 

 

共に青い薔薇の男性を見届けた日から、リナは日を開けずに【ラナンキュラス】に足を運ぶようになっていた。

佐伯が作る、500円の小さな花束を仕事帰りに購入し持ち帰るのが日課になろうとしている。

リナが訪れる23時半になる前に、佐伯はリナ一家の為に花束を用意する。片手で収まる位なこじんまりしたものではあるが、季節の花を選ぶようにしていた。

 

もうすぐ、日を跨ぎそうだ。

佐伯は壁掛け時計を何度も確認する。

 

―あれ?おかしいなぁ…―

 

 

約束を交わしているわけではないが、毎週金曜に必ず姿を現すのに、その日はなかなか来なかった。

自動ドアーが開く音がして、佐伯が駆け寄っていくと、眼鏡をかけた地味な若い女性が静かに入ってきた。

 

「いらっしゃいませ」

 

目を赤く腫らして、足取りもヨレヨレだった。

 

「何か、お探しですか?」

 

佐伯は何食わぬ顔で対応する。

 

「…いえ…ちょっと、見たいだけで…」

 

あからさまに視線を反らされた。

鼻も真っ赤になっていて、随分と泣きはらし、涙が枯れてしまっているように見受けられた。