(でもそれって、私の選択は間違っていたってこと……?)
環はこの期に及んで、そう思いたくない自分がいることに気付いた。
「別れなよ。私も、手続きとか手伝ってあげるから」
樹里はそうも言ってくれた。しかし、何てありがたい親友なんだろう……と、何故かこの時素直に思えなかった。
「ご、ごめん。もうすぐ、密さんが帰ってくるの。私も早く帰らなきゃ。あの人、怒るとすごく怖いの」
それは本当のことだった。時間を見るともう夜になっている。密は怒らせると怖いということを環は、身をもって知っていた。
「環……。あの、またすぐ連絡して。お願いだから。私、待ってるから」
樹里の言葉を背に、環はまた、あの新居へと歩き出した。
そして、そこで最大のピンチに遭うことになる……。
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環が家に帰ると不快感をあらわにした表情で、密はリビングで待ち構えていた。その後、モラハラ行動を繰り返す密に環は耐えられず、家を飛び出してしまう。