NOVEL

「Lady, Bloody Mary」~女の嫉妬~Vol.4

 

 

それから暫くして、CKNの休憩室では坂間と楽しげに談笑する聖奈の姿があった。

どうやらあれからランチデートに幾度か誘い、坂間もこの辺りの土地勘もないのでちょっと洒落た人気のカフェなどで楽しげに会話をしていた。

 

「あ、坂間くん。ちょっといい?この書類のことなんだけど」

 

そこに入り込んできたのは、紗夜であった。

相変わらず地味な眼鏡に紺のストライプが入ったパンツスーツで、黒髪をまとめ、きりっとしたキャリアウーマン姿である。

その有無をも言わせない完璧っぷりに、ちなみに仕事もできる実力も伴っているため聖奈は、じゃあとすっと紗夜を一瞥してその場を去っていった。

 

「話していたのに、ごめんなさいね」

 

と持っていたファイルを取り出し、開くとベージュ色のジェルネイルの細い指でそっと指差す。

 

「ああ、この件か。確かに面倒くさいね」

「部長に話してもらちが開かないと思って。直接、坂間くんに聞いてみた、ごめんね」

「いや、その方が助かる。さすがっ」

「褒められても何も出ませんよ〜」

 

ふっとクールに微笑む紗夜、全てが計算のうちだ。

紗夜には“自分を把握している”能力がずば抜けていた。

後輩の聖奈はまだ全てが経験不足で、あざとくやんごとなき主義で許されているキャラなのだ。

 

一方、お局女子社員として入社当時は秘書室希望だったが、希望叶わず研究開発部にずっと居続けているリノは、“居続けたこと”で、無言の圧という会社での“権力”を手に入れてしまった。

彼女の浮かれ具合から、きっとクリスマスの日に坂間と“何か”あったことは明白なのだが何より坂間は特に感情の起伏も全く見えず、浮かれているのは三宮ひとりだった。

 

「じゃとりあえず、会議室借りて少し話そうか」

 

こうやって坂間との距離も少しずつ確実に近づいていっているのだ。

 

広くない会議室の電気を点け、室内に談笑しながら入っていく2人。

 

 

 

私はそんな2人を遠くからそっと見つめている。

自分は完璧とでも感じていたのかしら、お馬鹿さん。

小竹紗夜、普段はわざと地味子に徹し長い艶やかな黒髪を髪ゴムでまとめ、冴えないアラサーを演じているが、休日になるとネイルサロン、エステ、そして美容院に行って自己メンテ。

メイクも変え別人に。

大学からの恋人はいるものの、元カレ、マッチングサイトからセフレも探すほどの欲の強さ。

まるで会社での自分を覆い隠すように、休日の彼女はまるで別人なのだ。

 

 

さて、会議も終わりそろそろ就業時間、そこへそっと顔を出す、トイレできっちりメイク直しをした一人の女性が顔を出した。

三宮リノ、アラフォーながらスタイルの良さと性格の強さで、すっかり坂間を「遼くん」呼びする唯一の人物である。

リノをそっと横目で見つつもデスクに戻る紗夜、すっと目線が合わさるがどちらがともなく目を逸らせた。

 

 

デスクに戻った坂間にリノは後ろから、甘い声でこう呼びかけた。

 

 

 

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