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Second Woman vol.8~裏切りの延長線上~

加澄からはっきりと別れを告げられたが理由を聞くことができず腑に落ちない純は三村が悩んでいることに気づきつつも上の空。

三村は純と加澄の関係を知っており…。

 


前回:Second Woman vol. 7~疑いが確信に変わるとき~

はじめから読む:Second Woman  vol.1~その後ろ姿にただ惹かれた、それだけの筈だった~

 

「純くん、加澄さんのことはもうあきらめて」

瞬きもせずそう呟く。

「え?」

不意打ちだった。

「少し前噂になってたよ、純くんと加澄さんのこと」

石田の言うとおりだった。頭が混乱する。三村にどう返事すればいいんだ?

「私知ってるよ。加澄さんと純くんのこと。11月に紅葉祭で見かけたもの。二人がライトアップの中で手を繋いで歩いてた。それにスマホに連絡が来ていたのも知ってる」

俺は絶句する。

「私よりも加澄さんの方が素敵だってわかってる。だから最近はあきらめたつもりだった。しょうがないんだなあって。そのうち純くんから別れようって言われるんだなって覚悟してた。でもね、最近加澄さんは人事部長とヨリを戻したって聞いた」

「なんで三村がそんなこと知ってるんだよ」

ついカッとなり聞き返す。加澄さんとのことを認めることになってしまった。

三村は一瞬躊躇し、唇をきゅっと結んで黙り込む。少しの間を置いて、意を決したように言った。

「たぶんそのうち内示が出ると思うけど、婚約したことで加澄さんは異動になるって。まだ内緒の話だけど人事部長が教えてくれたから本当の筈」

 

人事部長が?なぜそんなことを三村に話すんだ?

その瞬間だった。

不意に唇が重ねられる。三村からのキスだった。

 

 

「加澄さんと何があったかは聞きたくない。もう過去のことならどうでもいい。私が好きなのは純くんだもの」

抱きついたままそう言う。

俺は身体を離しながら言った。

「…社内だぞ」

「じゃあ今から純くんの部屋に連れていって」

 

なぜこのタイミングで婚約だったのか。

最近会えなくなっていたのは人事部長とよりを戻していたからなのだろう。婚約とは急に思えるが、離婚までしていたのだから人事部長はずっと望んでいたのかもしれない。

それなら正直に加澄さんから教えて欲しかった。自然消滅になるよりも、はっきりと突き放してもらった方がすっきりしたと思う。

そして三村がその事実を知っていること、そして何より俺と加澄さんの関係を知っていたこと。これまでそれを黙って傍にいてくれていたこと。

三村が不安を感じていることにうすうす気づきながらそれを俺は無視していた。

これから三村と何事もなく付き合っていくことはひどいことだとわかっている。

浮気がばれて許してもらうなんて馬鹿な男の典型じゃないか。