レストランを出て、古酒バーへ足を運ぶアユミと神尾。
その後の展開を期待するアユミだったが神尾は思わぬ行動を・・・?
ピヴォーテを出たあと、神尾は「好きかどうか分からないけど」と、斜め向かい辺りにある古酒のバーへアユミを連れて行った。
店に入れば、杉の木で作られた一枚板の立派なカウンター席が目を引く。
古酒のことを店の人が説明してくれたものの、普段日本酒を飲まないアユミにはよく分からなかった。
しかし、神尾は面白そうに店員の話に耳を傾け、あれやこれやと質問をしている。
「神尾さん日本酒?が好きなの?」
1軒目の店を出るころには、すっかり打ち砕け、アユミは敬語を使わなくなっていた。
しかし、なんとなく下の名前で呼ぶのが恥ずかしく、「神尾さん」呼びのままだが、神尾は気にしていない様子だ。
「日本酒が好きっていうか、古酒の店ってあんまりないから、ちょっと面白いよね」
ワイングラスに注がれている古酒は、まるで樽のきいた白ワインのような色をしている。
だが一口飲めば、コクが深くワインよりもずっと強く鼻に香る。
これは酔いそうだ、とアユミはチェイサーである水素水の注がれたコップを手に取った。
神尾はといえば、見た目には全く顔色が変わらないものの、さっきから体の距離が近い。
今も、カウンターに並び、肩が触れ合いそうな距離で見つめてくるので、思わずキスを待ってしまいそうだ。
「神尾さん、酔ってるでしょ」
もう、とアユミが言えば、
「仕事の飲みじゃ絶対酔わないんだけどなぁ、アユミちゃんと飲んでると酔っちゃうよね」
などと言う。