NOVEL

踏み台の女 vol.4 ~二人の約束~

 

女性らしい面長に、二重のぱっちりとした瞳、口は小さいほうだが、鼻筋は通っていて、髪の毛もネイルも手入れは怠っていない。

服装にも香りにも気を使っているので、人から外見を褒められることの多いアユミだが、

なぜか今まで恋人関係になった男たちは、どれもこれもパッとしないのだ。

 

友人のリサは、色んな男性とデートを重ね、その中でも顔も経歴も職業も稼ぎも、全てが一番の人を見つけるや否や、あっという間に結婚を決めた。

 

投資家でいくつもの事業を成功させているというリサの夫は、

リサに甘く、専用のアルファロメオを買い与え、毎週のようにミシュランに掲載されているレストランで食事をしている。

身に着けているジュエリーはいつも違うものだし、

どうやら特にお気に入りのカルティエやブシュロンでは上客らしく来店の度に特別待遇を受けるらしい。

 

 

派遣社員として毎日働く自分とは大違いの生活だ。

 

そんな自分にも、ようやく光が見え始めたかもしれない。

リサの夫と比べれば神尾の収入は雲泥の差かもしれないが、それでも一般のサラリーマンの倍以上は稼ぎがあるのは間違いない。

それに、社内の噂によると、神尾はいつか独立しようと考えているらしい。

 

金曜日にそれとなく話を振ってみたものの、やんわりとかわされ神尾の口から聞くことはできなかったが、かわしたという事実がむしろ信ぴょう性を感じさせる。

そうなれば、リサのようにアユミもいい生活を送れるかもしれない。

期待は膨らむばかりで、そんな時にまた神尾からラインが入った。

 

『誕生日の夜、空いてる?』

 

アユミはその文字に心を躍らせ、2時間おいてから、『空いてる!』と返信した。

誕生日にデートだ。

これはもう付き合う流れで間違いないだろう。

 

5分と開かずに神尾からまた返信が返ってきたのが、更にアユミを気分良くさせた。

 

『それじゃあ、デートしよう。いい店探しておくよ。それから、おれらが二人で会ってることは会社の人たちには内緒で。内緒の方が大事にできるから』

 

神尾のことを知っている誰かに自分たちのことを話したい、という衝動に駆られもするが、しかし『内緒の方が大事にできる』の文字。

アユミは了承の返事をした。

 

 

 

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 誕生日デートが決まり気分がいいアユミ。友人のリサに今日までのことを話すと・・・