NOVEL

選ばれない女 vol.9~高飛車な観点~

「だめ、ですか」

「いや、だめってわけじゃないです。愛沙さんに辛い思いをできるだけさせないように、これからますます頑張ろうって思いますが…。正直に言います。僕は、結婚しても女の人には働いて欲しい。できれば、奥さんにはお店を一緒に手伝って欲しい」

 

清水によると夫婦でお店に立つのが夢らしい。

お店は繁盛しているといっても、不安定な収入だからこそ、二人三脚で力を合わせ苦楽を共にしたい、と。

熱弁する清水の話を、愛沙は黙って聞いてきた。

 

お見合いが進んでいくと、お互いの価値観の確認、すり合わせが必要になる。

子供のこと、家のこと、仕事のこと。

避けられない話題だからこそ、早い段階で確認されるのは当然だった。

 

「清水さんのお気持ちはわかりました。…少し考える時間を下さい」

 

条件を絞りに絞ってやっとこぎつけたお見合い。

みすみすチャンスを手放したくなかった。

 

清水とは水族館デートで連絡先を交換した。

それから毎日ささいなやり取りをしている。

 

―帰ったら清水さんから連絡きてるだろうか。

 

仕事が終わってラインを確認するのが、愛沙の日課になっていた。

大方清水の方から連絡がくる。

 

〝休日は何をされているんですか

〝エステに行ったり、お店の手伝いをしたりワインを買いに行ったりしています。清水さんは何をされていますか″

〝ワインお好きなんですね。僕もワイン好きです。休日は食べ歩きか、山登りに行っています。今度一緒に山登り、どうですか?″

 

清水とは会話のテンポも合い、思ったよりも楽しい。

 

―そういえば、毎日の連絡を楽しみと思ったことって、今までなかったかも。

―条件も良いし…