駒沢にもフラれ、りとからの連絡も来ず、消沈した愛沙の気持ちを察したのか、林からこんな返信がきた。
〝一度当店にご来店いただけるでしょうか。
中込様から、改めてヒヤリングをさせていただきたいです。
一緒に素敵な方とのご結婚を目指しましょう。″
はじめから読む▶選ばれない女 vol.1~婚活パーティー~
なるべく早めに来店してほしいということだったので、仕事終わりに寄ることにした。
帰宅ラッシュのようで、名古屋駅はたくさんの人で溢れかえっていた。
閉店1時間前に結婚相談所へ着いた。
「中込様、お待ちしておりました」
相談所の入り口を開けると、林がいつもの張り付いた笑顔で出迎える。
個室ブースに通されると、最近の進捗を聞かれる。
「その後いかがでしょうか。気になる方などおられますでしょうか」
「いえ。気になる人はいないのですが…なぜ、わたしが選ばれないのかわからないです。林さんからみてどう思いますか」
「そうですね…。中込様は十分魅力的な方ですが…」
「ちょっと婚活に疲れてしまいました。自分が結婚相手に選ばれるかも、わからなくなりました」
疑問に思う気持ちと怒りの気持ちが半々ありながら、プロである林の意見を聞こうと相談する。
「アプリでいいと思っていた人からも返信が途絶えて…」
「そうだったんですね…。そういうことがあったのですね」
しばらく悲痛な表情を浮かべていた林は、一転して柔らかい顔をする。
「中込様は婚活をまだ始められたばかりですし、今後良い方と巡り合えるとわたしは信じています」
「ちゃんと会えますか。わたしは家族に自慢できるような、認められるような人と結婚したいだけなんです」
「中込様がよりハイスペックな方と出会いたいとお考えなのは承知しております。ですが…。正直に申し上げまして、今の中込様は周囲の方へのプライドで婚活をされていると思うのです」
愛沙は思ってもみなかった言葉に目を丸くした。
「他人軸で結婚相手を選ばれていないでしょうか。中込様が本当に結婚したいのは、どういった性格の方ですか」
「性格でいうと…そうですね、真面目で明るくて、思いやりのある人がいいなとは思いますけど…」
今まで男性をスペックで判断していた愛沙にとって、自分にはどんな性格の男性がいいかなんて考えもしなかった。
―それでも、真面目に働いてくれて、御(ぎょ)しやすい人のほうがいい。
「素敵じゃないですか。これを機会に条件も幅広く変えていきませんか」
と林は提案する。
「そうですね…」