NOVEL

選ばれない女 vol.6~不本意な答え~

「どうしたの?」

駒沢の声で我に返る。

「あ、いえ、何でもないです」

頭が真っ白になり、視界が揺れる。

 

―あれ、彼女?まあ、そうよね。あんなにかっこよくてスペックもいいもんね。いや、でもまだわからない。

 

愛沙は一番のお相手候補の気持ちが自分にないのではないかと、静かにショックを受けていた。

 

「お昼はどこで食べようか」

「うーん、どうしましょうか」

 

 

呑気に尋ねる駒沢に、気の利いた返事をする余裕もなかった。

思えば、〝りと″が本命なのだから、駒沢とデートする理由もない。

年齢も若い、収入も高い、顔も文句なし。

明らかに〝りと″の方が勝っていた。

 

よりハイステータスの男性と結婚し、家族に認められる。

それが愛沙の目標だったのだから。

そう思ってしまうと、このあとのデートは急に無意味なものに感じられる。

 

―早く帰ってしまいたい。

 

そう思いながら過ごす駒沢との時間は、苦痛でしかなかった。

 

「気分悪い?」

と気遣ってくれるも、

「いえ、そんなことないです」

と笑顔で返すのが精いっぱいであった。

 

帰宅して自室に着くと、すぐにマッチングアプリを開く。

 

〝りと″に対するもやもやが消えない。

何をしていたかさり気なく聞きたい。

が、アプリ内のたった一人の頼みの綱を失ってしまうのは困る。

とりあえず林に駒沢とのデートを報告しなければと携帯を手に取る。

 

―駒沢さん、〝りと″さんより劣るけど一応キープしておこう。

 

愛沙は、〝りと″との関係がだめになったときの保険として、駒沢にOKを出すことにした。

 

再びアプリを開く。

‶りと″のデートの誘いに、愛沙が

 

〝ぜひお会いしたいです″

 

と返信したところでメッセージは途切れていた。