「そっかあ。…わたしから言えることは、愛沙が無理せず、自分らしくいられる人と一緒になるのが幸せなんじゃないかなってことだけど…」
うーん、と遠くを見ながら考え込んでいた加菜が、はっとして言う。
「相談所って同時進行してもいいんでしょ。アプリとかどう?今そういう出会いもあるらしいよ」
相談所でヒットした残りの9人はぴんとこなかったため、選択肢を広げるためにそれもアリかもしれない。
「うん。少し抵抗あるけど、アプリで出会って結婚する予定の子も周りにいるわ」
そういえば、美里は入籍日が延びたらしく文句を言っていた。
「知り合いはこのアプリで付き合ったって言ってた」
加菜が見せてくれたのは、すっきりとしたシンプルなデザインのアプリ。
アプリの名前だろう、大きく〝ENHANA″と書かれている。
―美里ちゃんの使ってるアプリだ。
アプリ名は、花びらのように広がる人との縁を咲かせて欲しい、との願いが込められているようだ。
ロゴである花のモチーフは色合いも優しく、気軽に始められそうな気持ちになった。
「女性は無料だけど男性は有料だし、男性の真剣度も高いそうよ。会員数も多いし、ハイスぺ男子もたくさんいるみたい」
「でも、個人情報とか大丈夫なの?写真とか載せるんでしょ?」
「顔写真じゃない人もいるんだって。でも、顔がわかったほうがマッチング率も上がるし、愛沙は美人だから載せたほうがいいんじゃない?」
「そっか~。考えてみようかな」
ソルベは柚子のシャーベット。
さっぱりとした味が口に広がる。
「ああ、幸せ~」
「ふふふ、愛沙、ルクと同じ表情してる」
ルクは加菜が飼っている犬で、小型犬のローシェン。
夫婦でルクを溺愛している。
「わ!ルク!いいな。懐かしい」
「またうちに来てよ!ルクも喜ぶわ」
近いうちにまた会おうと約束し、元気をチャージした愛沙の気持ちは晴れ晴れとしていた。
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友人・加菜から提案されてマッチングアプリに登録するも成功率が思わしくない愛沙は結婚相談所で知り合った駒沢と二回目のデートをする。デート後、相談所の担当からある連絡が入る…。