NOVEL

選ばれない女 vol.5~ENHANA~

「相変わらず仲が良さそうでよかった」

「愛沙は彼氏とはどんな感じ?」

「うーん、あの人とは別れちゃった。なんか、わたしといても楽しくないんだって」

「そうかなあ。わたしは愛沙といると楽しいけどな。彼とは合わなかったんじゃない?」

そうかも、と小さく呟く。

 

「…それよりね、実はわたし、婚活始めたんだ」

愛沙は加菜に、最近本格的に結婚相手を探し始めたこと、結婚相談所で出会った人とデートをしたことを伝える。

「えー!何それ!初耳!いいじゃん、いいじゃん!で、その人とはどうなったの?」

1回デートしてお互いにいいなってなったから、また今度会うことになったよ」

 

駒沢と初デートの後、彼からもOKが出たようで、先日仮交際が始まった。

 

興奮していた加菜は、ふと冷静になって言った。

「あれ?でも、なんか愛沙疲れてる?テンション低いけど。どうしたの?」

「そう?そんなことないよ」

 

加菜が口を開きかけたとき、ちょうどアミューズが運ばれてきた。

 

 

サーモンがきゅうりで巻かれ、その上に刻んだ玉ねぎが乗せてある。

ハーブと赤いペッパーが彩り良く添えられていた。

愛沙はウエイターが去るのを確認する。

「食べながら聞いてほしいんだけど」

加菜がこくりと頷き、こちらを見つめる。愛紗は少し声を落として言った。

「はっきり言って、わたし容姿には自信あるのよね。そのための努力も我慢もしてきたし、お金だってかけてきた。でも、パーティーに参加して、わたしが良いと思った人が追いかけてこなくて、こんなことってあるんだって初めて思ったの」

加菜は料理を口に運びながら、黙って聞いている。

「最初は何でよって腹も立ったし、悔しかったけど、でも他に男なんていくらでもいるし、そんなのどうでもよくなっちゃった」

今まで抱えていた感情を一気に吐き出す。

 

「わたしね、絶対男に妥協はしたくないの。誰よりも素敵な男性と結婚して、真奈美や両親に〝婚活でこんなに良い男性と結婚できてよかったね″って言わせたいの」

両親や妹に見下されたくない。

がっかりされたくない。

完璧な人に会って褒められたかった。