―でも…自分の生活に妥協はしたくない。結婚は一生ものの買い物だから。
「それで合っています」
「それならば、妥協点を見つけたいのですが、どうでしょう」
「わたしは意見を変えるつもりはありません」
「そうですか…。愛沙さんはお綺麗だし、一緒にいて楽しかったけど…。残念ながら合わなかったみたいですね」
清水が心から残念そうに俯く。
「待ってください」
―このままでは破断になってしまう。
「わたしは和食も完璧に作れるので、普段の食事は任せてください。ワインだって食事に合ったものを選べます。ずっとこのプロポーションを維持しますし、顔だって…」
「愛沙さん、落ち着いてください」
興奮をたしなめられた自分が恥ずかしくて、居心地が悪い。
「自分で言うのもなんですが、僕は寛容な方ですし、大抵のことは話し合いで解決できると思っています。ですが…愛沙さんは、それをする気はないってことですよね。あなたには、あなたに合った方が現れるはずです。たまたま、僕とは合わなかった、それだけです」
落ち着きを取り戻した愛沙は言った。
「わたしを選ばなかったら後悔しますよ」
半ば脅すように言ったが、清水は動じなかった。
「お互い良い方を見つけられるように頑張りましょう」
帰り道は最悪の気分だった。