NOVEL

年収一億超えの妻たち vol.6~近似~

早苗さんは、静かに頷きながら、その場を後にする…。

そしてその数分後、私は早々に安奈さんに向けて返信した。

正直、早苗さんの同伴を許してもらえなかったらどうしようという不安がなかったわけではない。

 

しかし、返ってきたのは「歓迎するわ、ご一緒にどうぞ」との返答だった。

こうして、何事もなく順調に事が運び、ママ会当日を迎える。

 

(そうだ…こういったことは夫にも話しておいた方がいいわよね?)

 

その時、不意にそんな思いが私の脳裏を過った。

でも、このことを夫である翔平に伝えたとしても、恐らく素っ気ない答えが返ってくるに違いない。

 

でも…。

 

たとえ、そうだったとしても、彼に隠し事をする気にはならなかった。

それが私の誠意であり、彼への思いの表れだからである。

 

だから…。

私は勇気を振り絞って、安奈さんのことと彼女に誘われてママ会に行くことを翔平に告げる。

 

しかし、そのことを聞いた彼は意外にも予想と異なる反応を示した。

 

「そうか…楽しんできなさい」

 

無機質のような表情の中に僅かに生じた…人間らしい温かさを含む言葉…。

それが本心だったのか…それともただの気まぐれだったのか…。

それは分からないが…。

 

ただ、その言葉はすごく心の中に残っていた。

 

そして夫を見送った後、支度を済ませ私も自宅を後にする。

 

でも、安奈さんのお宅を知っているわけではないので、出会った公園で待ち合わせしていたのだ。

 

こうして、私たちと安奈さんは公園のベンチ前で顔を合わせた。

 

「お早うございます、安奈さん。お待たせしてしまいましたか?」

「いえ、私もいま来た所よ、美佳さん」

 

私たちは軽く挨拶を交わし、彼女の自宅に向けて歩き出す。