もし早く出るにしても、今までは前もって朝が早いとか状況を教えてくれていたのに、何故?
違和感を通り越し、不信感が心の中を渦巻く。
昨日の夜はあんなにも情熱的だったのに、朝になったらまるで昨日の夜のことがなかったかのように素っ気ない。
明らかに異常だった。
普通に考えて、これは何かがあるとしか思えない。
「ねえ、早苗さん…今日の彼、なにか変じゃなかった?」
不信感が拭い去れず、私は早苗さんに問いかける。
「いえ、特にそういったことはなかったと思います。あの…奥様、もし旦那様のいつもと異なる行動を気にされているのなら、気にし過ぎだと思いますよ」
「そうなのかな…。でも今までこんなこと一度もなかったし…」
「確かにそうですね、でも旦那様も人間です。たまにはそういったうっかりミスくらいあるのではないでしょうか?」
「本当にそうなのかな…」
釈然としない思い。
早苗さんに告げられたことは十分に有り得そうだと分かってはいながらも、私はその言葉を素直に受け入れることが出来なかった。
どうして受け入れられなかったのか正直、自分でもよく分からない。
ただ一つだけハッキリと分かっていることは、私が夫である翔平から受ける愛情に疑念を持ってしまったということだけ…。
だからなのだろうか?
私が彼の愛情を信じられないのは…。
確信の持てない愛情に頭と心を悩ませながらも私は、早苗さんの作ってくれた食事を食すべく食卓につく。
しかし、サラダが盛り付けられている皿にフォークを突き立て、野菜を口に運んでみたものの何故か、今一つ食欲が湧かない。
それでも作ってくれた早苗さんに申し訳ないと思い、何度かレタスやキュウリを咀嚼するが、それが限界だった。
「奥様、体調でも悪いのですか?」
「ごめんなさい。体調が悪いわけじゃないんだけど、なんか食欲がなくて…」
申し訳ないとは思いつつも、彼女にそう告げる。
どんなに申し訳ないとの思いがあったとしても、こればかりはどうしようもなかった。
迷いに満ちた気持ちを伝達するかのように、体がそれに反応してしまうのだから。
情けない話だけど、本当にどうしようもないのだ…。