それにより彼女の旦那さんが大手不動業を営む会社の社長であることや、
彼女が旦那さんの会社の元秘書をしていたということなどを知った。
また彼女が結婚したのは今から7年ほど前のことらしい。
彼女とここまで打ち解けられたのは早苗さんが背中を押してくれたからなのだが、しかし一つ疑問なのは何故、野村さんに声をかけるように私に言ったのかだ。
他にも声をかけられそうな人はいたはずなのに・・・何故?
私は心の片隅に、そんな僅かな疑問を抱えながら家へと帰宅する。
「お帰りなさいませ、奥様」
「ただいま、早苗さん」
「野村さんとの交流の方はいかがでしたか?」
「ええ、順調よ」
彼女の問いに答えつつ、靴を脱ぎスリッパに履き替える。
「ところで早苗さん、今更なんだけど、何で安奈さんに声をかけるように勧めたのかしら?」
「大した理由ではありませんよ。何かを悩んでいる様子が奥様に似ていたのでとりあえずお勧めしてみました」
「えっ、そんな理由で?」
「はい、そんな理由です。ですが、そういう切っ掛けが何かをする時には意外に大事なんですよ」
「でも上手く行かなかったらどうする気だったの?」
それは当然の疑問だった。
しかし、そんな疑問に対して彼女は特に悩む事もなく、微笑みながら言う。
「勿論、その場合はまた別の人で挑戦して頂くだけです」
「そう…なんだ」
意外過ぎる答えを聞き、呆気に取られつつも私は納得する。
でも…何であれ、早苗さんのお陰で心の中に少なからず余裕が生まれたのも確かだ。
現状、安奈さんとはちょっとした友達といった程度の関係に過ぎないが、それでも同じような境遇を語り合える相手がいるというのは、それなりに心強い。
なにより安奈さんとは、それなりに悩み事を話し合える仲になっているのは精神的に大きなプラスだった。
現状ママ会を開催し心を開いて、色々なことを語り合えるような間柄でこそなかったが、それでも、そんな関係に至れるまでにそう時間はかからないような気がする。
安奈さんとならきっと…。