NOVEL

運命の輪 vol.7~ぬくもり~

でもこれが“恋愛か”と問われると分からない。

今に限ったことではない、高校を卒業してから2度、付き合ったこともある。

けれど、どこか醒めた目で自分を見つめている自分が居る。

その度に、紗希はトンネルに迷い込んだような落ち着かない気分になるのだ。

理由は分からないけれど・・。

 

考え込んだ紗希を見て純也がもう一度ため息をつく。

「ま、いいや。長期戦でいくことにするから」

そう言うと紗希の頭を軽く撫でて、立ち上がった。

シャツを羽織るとベランダの窓を閉め、もう一度ベッドへ戻ってくる。

 

「冷えちゃった。温めて」

「どうぞ」

その仕草が可愛くて、紗希は潜り込んだ純也を抱きしめた。

 

微睡みかけた時、耳に声が響いた。

「恋って、周りが輝くんだから!」

そんなことを言っていたのは誰だっけ?

あぁ、理香子だ。

高校時代の友人、橘理香子。

卒業して短大へ進んだ彼女はすぐ結婚したはずだ。

 

(今も恋愛しているのかしら・・)

結婚と恋愛、どちらも自分には分からない。

 

「紗希には分からないかもね」

頭の中に声が響く。

あれは、香那の声。

 

そう言えば、香那はどうしたんだっけ?

高校を卒業して東京の大学へ進んだはずだけど・・。

音信がなかったことを今さらながら思い出す。

 

(本当に音信はなかったのかしら)

この前の同窓会の連絡の様に紗希には届かなかっただけなのかも知れない。

微睡みの中で、ぼんやりと紗希はそんなことを思い出していた。

 

頭の中に、なぜかピエールの顔が浮かぶ。

その理由を知る前に、深い眠りに落ちていった。

 

Next:727日更新予定

同級生・担任と懐かしい顔が揃った同窓会当日、紗希は幹事の由衣から受付を頼まれ名簿を見返しながら懐かしい名前に目を留める。その名前の人物とは?