「いらっしゃい」
皆、華やかで一目で違うと分かる。
ピエールが招き入れたのは、どうやら仕事関係の人たちらしかった。
何人かはモデルだろう。ファッションに疎い紗希でも雑誌で見たことがある。
「仕事関係の知り合いなのよ、来たいって言ってたから呼んでたの」
ピエールが説明するように紗希に声を掛ける。
そういえば、エレベーターで会ったとき荷物を抱えていた。
彼らを迎える準備をして居たのだろう。
「やっぱり、お邪魔ですね。私、帰ります」
「そんなことないわ、いやじゃなかったら居て頂戴」
ピエールが紗希の左手を軽く握る。
その瞳を見つめながら、用意していた答えとは違う言葉を発していた。
「・・じゃあ、少しだけ」
そう答えると紗希は差し出されたグラスを手に持ち直した。
高校時代と変わらず恋愛に興味はないけれど、ピエールと居るのは嫌ではない。
その理由が知りたくて、もう少し留まることにした。
- ゲームのはじまり
10畳ほどのスペースはいつの間にかちょっとしたパーティのようになっていた。
誰かがギターを持ち出してきて、曲を弾いている。
客の一人が紗希の隣に座って、先ほどから話しかけてくる。
「君、ピエールさんの知り合い?」
「そうです、まだ知り合ったばかりですけど」
酔いも手伝って、普段なら初対面の人間とは距離を置く紗希も軽い会話を楽しんでいた。
「ふーん、名前はなんて言うの?僕は純也、林純也」
ハーフだろうか、綺麗な顔をしている。
確か2カ月くらい前、タウン誌の表紙を飾っていたような気がする。
「紗希です。宮田紗希」
「紗希ちゃんか、綺麗な髪」
純也が軽く髪に触れる。
「ピエールさんのカット?」
「はい、そうです」
「ふふっ、敬語は変だよ。年下だよ、僕。きっと」
楽しげに笑いながら、純也がからかうように言う。
確かに、多分5、6歳は下だろう。