NOVEL

 運命の輪 vol.5~遠い日の記憶 ~

16年前 10月 

キーンコーン、カーンコーン 

お昼休みを告げる鐘の音。

終礼を終え、皆思い思いのメンバーで集まり始める。

 


前回:運命の輪 vol.4~偶然は必然~

はじめから読む:運命の輪 vol.1~動きだす時間

 

 

「紗希、香那、今日は中庭で食べよ!」

理香子が香那の背中に飛び付きながら言う。

「オーケー」香那が答える。 

紗希もお弁当の入ったポーチを手に教室を後にした。

 

夏休み明けの学校はどこか落ち着かない。 

文化祭に体育祭、行事が待ち構えているからだろうか。

加えて夏休みに怪我をしたせいで紗希は他の生徒より休みが長かった。

 

3人で木陰になっている中庭のベンチに腰掛ける。

 

「香那は今日もクラブ?」

理香子がサンドイッチを手に話しかけてくる。 

「そう、今日もクラブ。理香子は今日も帰宅部?」 

「ふふっ、今日はね、デート!」 

「あれ、夏休み前に別れたんじゃなかったっけ?」 

香那にそう聞かれ、理香子は右手の人差し指を目の前で左右に振る。 

「ノンノン、いつの話? 今は新しい恋に夢中なの」

「へぇ、また?懲りない子ね」

香那が呆れたように相槌を打つ。

 

「ひっどーい。ね、紗希はそんなこと言わないわよね?」

急に話を振られ、紗希は喉を詰まらせる。

 

「え、私?・・まぁ、理香子が良いなら良いんじゃないかな」

 

紗希の答えが不満だったのか、理香子は軽く二人を睨みつける。

「大体ね、二人とも変よ?お年ごろなのに彼氏どころか男友だちもいないなんて!」

 

(男女交際に興味がないのは自分だけではないと思うけど)

紗希はそう思いながらふと視線を感じて顔を上げた。