私が康平に思っていることは子育ての仲間である綾香さんにはお見通しだった。
また康平が私に対して思うこともきっとこの前のバーで打ち明けたのだろう。
修司さんはわかっている様子だった。
はじめから読む:夫婦のカタチ vol.1~失ったもの~
-腹を割る時-
私は今まで康平と向き合おうと感情をぶつけることが何度かあった。
けれど2人きりだと思うように伝わらず結局子育てをしながらの2年間で心の距離が遠のいてしまったように感じた。
(これは綾香さん達が私たち夫婦にくれた最初で最後のチャンスかもしれない)
私はそう思いながら1つ1つ、今まで感じてきたことを並べた。
積み重ねてきた仕事でのキャリアをいいお嫁さんになるために諦めたこと。
仕事で家計を支える康平に頼れず、気づけばワンオペ育児となってしまったこと。
私には育児しかないのに完璧にこなせないもどかしさや不安。
そしてそれを康平に伝えきれない寂しさ。
今までは諦めることや綾香さんと過ごす時間で蓋をするように隠していた感情が、話し始めると沸き上がるように溢れ出た。
「康平のことを責めたいんじゃなくて結局、自分の想いを伝えられない私がいけないんだろうな」
私がそう言うと、綾香さんは
「本当は康平さんが言わなくても汲み取れてればいいけど、そんな余裕がないくらい康平さんも何か抱えていたんじゃない?」
と康平に問いかける。
今まで誰かに弱みをつかれたことのない康平にとって、この問いかけは正直に答えづらいものだっただろう。
それを察した修司さんは綾香さんと乗り越えた"過去の2人の話"を始めた。