NOVEL

夫婦のカタチvol.6~すれ違う想い~

私が綾香さんと頻繁に会うようになってからどれくらい経っただろう。

気づけば日も短くなり、肌寒さを感じる季節になっていた。

 


前回:夫婦のカタチ vol.5~ママ友との交流~

はじめから読む:夫婦のカタチ vol.1~失ったもの~

 

-私が求める相手-

今日は三連休初日の土曜日なのに相変わらず康平は出張中。

綾香さんも仕事の日だったため、久しぶりに勇希を連れてショッピングモールまで出掛けてみることにした。

ベビーカーに勇希のオムツやおやつ、飲み物やおもちゃ、沢山の荷物をぶら下げて歩くのは私にはお手の物だ。

勇希が何か欲しがれば、小分けにしたいくつものカバンからドラえもんの不思議ポケットのようにおもちゃを差し出す。

1人で勇希のお世話をすることにも、何のストレスも感じることなく、最近は自分を「自立できた母親」と思うようになっていた。

 

お気に入りの子供服のお店に行くと、セール中でたくさんの子供連れで賑わっている。

あちらこちらで目にうつる、夫婦で仲睦まじく子供服を選ぶ姿が久しぶりにショッピングモールに来た私に、居心地の悪いようなチクリとする感覚を与えた。

 

私は勇希が大きくなるちょっと先を見据えて、今よりちょっとだけ大きめのスニーカーを手に取った。

「この靴もどんどん大きくなる勇希にはすぐに小さくなっちゃうんだろうね」

「今の靴もすぐに履けなくなっちゃうのか」

なんて愛する息子の成長を感じながら、普通の夫婦なら楽しく買い物するのかなぁと、どうしても考えてしまう自分がいた。

 

少し小腹が減ったのでカフェに入り、スコーンとチャイラテを頼み休暇することにした。

おやつを食べのんびりしだした勇希を横目に、久々にスマホでSNSをチェックする。

28歳という年齢のこともあり、SNSを開けばいつも誰かしらが結婚や出産の報告を載せている。

私だってみんなと同じように結婚もして子供にも恵まれている。

なんなら金銭面では世帯収入1200万円で他の家庭の2倍以上は恵まれている。

それなのに画面に並ぶ友人達の幸せそうな姿や目に映るよその家族が、これほどまでに羨ましいと思うのはなぜだろう。

 

ここ最近は綾香さんと会って自分の寂しい気持ちを紛らわせて、いつしか一人前の母親気取りで強がっていたのかもしれない。

久々に勇希と二人きりで過ごす休日。

現実を誤魔化して過ごしていた自分に気づいた。

 

(私が勇希を一緒に育てたいのは綾香さんでも自分1人でもない。康平というパートナーと育てたいだけ・・・)

 

そんな自分の気持ちに気づきながらも康平がどこまで私たち2人を想っているのか、康平との心の距離がいつしか遠くなってしまった今、妻である私はわからないでいた。

 

晴れない曇り空のような気持ちを胸に、私は家族連れで賑わうショッピングモールを後にした。