次の日から私は早速ご好意に甘えて勇希を連れて綾香さんの自宅を訪ねた。
はじめから読む▶夫婦のカタチ vol.1~失ったもの~
-初めてのママ友交流-
綾香さんのお宅はナチュラルテイストのインテリアでまとめられ、遊び盛りの直人くんのおもちゃなどが暮らしに彩りを与えているような住まいである。
暖かな暮らしを感じられる空間とほのかなアロマディフューザーの香りが、私をリラックスさせてくれた。
直人くんと勇希は2歳差ではあるものの男の子同士ということもあり、お互いに黙々と遊びに励んでいた。
保育園に通っていない勇希にとって直人くんと過ごす時間はきっと新鮮で、いつもとはまた違う表情を感じられた。
2人が疲れきってお昼寝を始めると「私たちもお茶タイムにしよっか」と言って、綾香さんは紅茶とお茶菓子を用意してくれた。
お茶をしながら子供の成長の話や教育の話、嬉しかった瞬間の話やちょっとした愚痴を溢したり。
そんなたわいもない子育ての話を誰かとできるということが私にはとても新鮮で嬉しく感じられた。
学生の頃からコツコツ続けているハンドメイドの趣味の話など、綾香さんとは意気投合する仲となった。
「今度はうちに遊びに来て!」と
私の家でも会うようになりいつの間にか私と綾香さんは毎週頻繁に集まり、一緒に子育てをするママ友同士となっていた。
こうして綾香さんと過ごす時間ができたことで私の中にあった育児の孤独感は消えていった。
そして、日が経つごとにできることが少しずつ増えていく勇希の成長を日々感じながら過ごしていった。
-康平の抱える気持ち-
26歳の俺にとって奈緒美はとても新鮮に感じられる不思議な存在だった。
それまでの人生、運動もスポーツも器用にこなせる方で、人間関係も豊かな生活を送ってきた。
社会人になる時もそこらの新卒とは比にならない給料の良い会社に入社し、仕事もスマートに、着々とキャリアを積んできた。
常に順風満帆で完璧な「こなせる自分」が我ながら好きだったし、自分自身への自信に繋がっていた。
しかし、こなせる自分に寄り付くのは昔から決まって「戦略的な女性」ばかり。
何度か付き合いはしたものの、完璧な彼氏でいることをメリットと思われながら繋がっているような気がして、自分の弱みを見せられる隙がなかった。