そんな中で出会った奈緒美は、俺のキャリアなどに食いつきもせずどんな時でも飾りすぎず自然体だった。
今まで出会ってこなかったタイプの女性で、俺は初めて自分からアプローチした。
奈緒美と過ごすようになって4年。
結婚を経て、勇希を授かった。
今でも奈緒美を心から愛している。
そして勇希という守るものが1つ増えたことで
「絶対にこの幸せを守り抜かなければ」という自分の中での責任感が強まった。
でも、自分でもはっきりわかる。
ここ数年の自分の空回りを・・・。


仕事ではキャリアを積むごとに任されることが増えていく中、家庭の外では相変わらず
「完璧にこなせる自分」を求めてしまう。
一方で奈緒美のいる家庭では「完璧さを求めない自分」が染みつき、いつしか俺は家庭を疎かにし、仕事を常に最優先してしまうようになった。
そんな自分に気づきながらも
「勇希と奈緒美の幸せを守る為だ」と言い訳をして、この2年間過ごしてしまった。
この2年間で奈緒美は1人の立派な母親として勇希と共に成長していた。
そんな、日々成長し続ける2人と結婚前と何も変わらない自分。
奈緒美が勇希のちょっとした成長を伝えてくれるのをとても嬉しく思う反面、負い目を感じて素直に喜びきれない気持ちがあった。
(父親失格だな俺・・・)
仕事と育児を両立するお父さんは同僚や友人、周りに沢山いる。
みんながこなせていることが自分にできないなんて。
この2年間で俺の中には「父親としての劣等感」が芽生えていた。
-奈緒美の一言-
泣いている奈緒美を置いて接待の呼び出しに向かったあの夜から数日。
俺は奈緒美になんと言い出せばいいかわからず、残業に逃げることで奈緒美とすれ違う生活を送っていた。