公平を失った代わりを得るために始めたマッチングアプリであったが、人に会っても、会っても、心の穴はますます大きく闇が深くなっていく気がする。
今ではもう手に入れられない公平に重ね、〝彼″に対する想いは、ますます募っていくばかりで・・・?
アプリで男を漁り、数人ずつ、毎週会っていく日々は変わらない。
―心が満たされる日はくるのだろうか。
―どうしたら愛されている実感が得られるのだろう。
会っても、会っても、心の穴はますます大きく闇が深くなっていく気がする。
公平を失った代わりを得るために始めたマッチングアプリ。今ではもう手に入れられない公平に重ね、〝彼″に対する想いは、ますます募っていくばかりだった。
彼と会った日から、記憶を呼び起こす。
初めて顔を合わせたときから、部屋に入るまで。
会話の内容から、表情、彼に触れられた感覚も。
―会いたいな。
うずうずする。
体の中心を、大きな生き物がずるずると這っているようだ。疼く体を、幸枝はどうしても止めることができなかった。
土日は自宅で疲れた体を充分休め、エネルギーを充電する。3D式振動マシンで軽く運動、無添加の高級生食パンや、お取り寄せした和風とろ生ローストビーフを食べたあとはゆっくりする。
たまにマッチングアプリを開き、いいねチェックと、やり取りの確認、なんとなく男性プロフィールを見たりする。
そして、あの人の最終ログイン歴をチェックしては落ち込む。
―2時間前、か…。
彼の最終ログインは、2時間前。
相変わらずアプリを使っているようだし、このところログインも毎日している。
―彼女とうまくいってないのかな。
―それなら、いっそのこと、奪ってしまおうか。