NOVEL

引きこもり女の裏側 vol.10 ~彼への想い~

 

美人だと言われるようになった容姿も、男うけのために買った服たちも、高級な化粧品で整えた体も、全てこのときのためなのではないだろうか。

 

―でも…。

 

理性と欲望の狭間で葛藤する。

幸枝は表向きマッチングアプリをしていないことになっているし、略奪に動いてしまったら、周りからの印象が悪くなってしまう。もし彼を奪えたとして、彼女に恨まれたくもない。

だが、腹の底から沸き上がってくる情動を抑えきれそうにもない。

 

それなら、一度だけ、連絡してみようか。

 

もし断られたら、諦めがつく。

彼のことは思い出にしよう。

 

〝もう一度会えませんか。″

 

 

アプリを開き、思い切って送る。毎日ログインしている彼なら、気づくだろう。

また夜になったらアプリを開いてみよう。

 

―それまで、顔のお手入れでもしておこう。

 

携帯を触っているとソワソワして時間が経つのが遅いから、何かしておこうと思った。

リビングに置いていた、最近買ったばかりの多機能美顔器を手に取る。近くにあったスタンドミラーに手を伸ばし、自分の顔を映す。

 

―わたし、こんな顔してたっけ。

 

その姿に幸枝は驚愕する。

ここ数日で、幸枝の頬はこけてしまっていた。

 

一眠りすると、あれから数時間が経っていた。

 

アプリを開き彼からの返信を確認する。

 

―返信きてる!