NOVEL

2番目の女 vol.10 〜既読にならない週末〜

物語の結末なんて、2通りしかない。ハッピーエンドかバッドエンド。フィクションとして楽しむ分には、どっちだって構わない。だけど、自分自身の物語だったら、誰だってハッピーエンドを目指したいと思う。

2番目の女を脱却してスタートした幸せへの道。私の物語は、今始まったばかりだ。

ハッピーエンドで物語を終えられるように、私は幸せな毎日を過ごしていく。

 


前回:2番目の女 vol.9 〜既読にならない週末〜

 

結婚式はスムーズに終了し、親戚や友達、会社の人から多くのお祝いの言葉をもらった。私にとって、とても幸せな1日だった。そして何より、大輔くんが笑顔でいてくれることが嬉しかった。

 

結婚式が終了し、二次会が開かれることとなった。片付けも終わって大輔くんと一緒に二次会に向かうと、お店の入り口で一人で立っている翔太がいた。大輔くんは、一瞬で私の友達ということを察したのだろう。私の隣からスッと離れると「ゆっくり話しておいで」と一人でお店の中へ入っていった。

 

翔太と2人きりになり、流れる沈黙。気まずい時間が過ぎていった。時間にするとたった数十秒のはずなのに、なぜかとてつもなく長い時間に感じた。

 

「どうかした?」

 

何も話さない時間に耐えきれなくなった私は、翔太に声をかける。すると「友梨ちゃんが幸せになってくれて良かった」と返された。

 

今まで幸せになれなかったのは誰のせいだと思ってるの。

 

思わず漏れそうになった言葉を食い止める。今、翔太と揉めている暇なんてない。「ありがとう、それより二次会来ないの?」と翔太に念のため声をかけてお店に入ろうとする。すると「俺、友梨ちゃんのこと本当に好きだったんだ」と急に腕を掴まれて告げられた。

きっと、私がまだ20代の頃に同じセリフを言われていたら、私の胸はときめいていただろう。だけど、今さらどんな甘い言葉を言われたって、翔太になびくわけがない。

 

「私、大輔くんと一緒にいて幸せなの。もう邪魔しないで」

 

そう言った私は翔太の腕を振り切り、お店の中へ入った。お店に入ると、仲の良い友達の姿が目に入る。一瞬入口の方へ顔を向けると、そこに翔太の姿はなかった。そして二次会に翔太は参加せず、後で聞いた話だと共通の友達にLINEで「飲み過ぎたから帰る」とメッセージが入っていたらしい。最後の最後まで、勝手な人だった。

 

 

「森田さん、おめでとうございます。元気な女の子です」

 

大輔くんと結婚して2年が経った頃、私たちは命を授かった。生まれてきたのは女の子。決して若くはない歳での出産で不安ではあったが、特に問題はなく出産することができた。大輔くんは出産にも立ち会ってくれて、ずっと私の手を握ってくれていた。まさに2人の命。小さな命を腕に抱き抱えると、幸せな気持ちでいっぱいになる。

 

子供の名前は、男の子だったら大輔くんが決めて、女の子だったら私が決めようということになっていた。生まれたのは女の子だったから、私が名前を決めることになる。

 

「名前、どうしよっか」

 

これまで私は、子供の名前については口に出していなかった。だから、大輔くんはまだ決まっていないのではないかと焦っていたようだ。しかし、私の中で子供の名前は決まっていた。