NOVEL

Second Woman vol.7~疑いが確信に変わるとき~

端から見ればいい大人が年上の女性にもて遊ばれただけなのだろう。すっかり浮気心に振り回されてしまっていた。

もう会えないと言われたその日より、日に日に落ち込んでいくのがわかる。魅力に憑りつかれただけでなく俺もそれなりに好きだったのだろう。

手に入らなくなったから余計にそう思うのかもしれない。

相変わらず仕事に身が入らずテラスへ行く。

 

この間のように人事部長と鉢合わせになるのは嫌だなと思っていたが、出勤表をこっそり確認すると有休中だった。

 

コーヒーを持って外へ出た。中身はもちろんブラックだ。

堂々とさぼっているといつものように石田が声をかけてきた。

「こんな時間に何してるんだよ?やけに長いサボり時間だな」

 

 

石田の席はテラスに近い。きっとそこから丸見えだったのだろう。

「なんかやる気なくってさ」

「なんだよ。三村になぐさめてもらえば?」

「最近は三村もどこかよそよそしい」

自棄(やけ)になっていたので俺は正直に言った。

「うわ、最悪だな」

「最悪って言うな」

反抗したがそれくらいはっきり言ってもらった方が気持ちが良い。もうどうでもよくなってくる。

「まーもし三村にフラれたなら次行けばいいじゃんか。お前結構かっこいい方だしさ。最近は身につけるものが素敵だってうちの部署の女性も言ってたぞ」

それは加澄さんのおかげだ。

一緒に買い物に行った時に見立ててくれたものが素敵だったからだ。

「でもちゃんと三村と向き合えよな」

真面目な顔を俺に向ける。

「あいつさ、お前のことで相変わらず悩んでたぞ。一緒にいてもお前が楽しくなさそうだし、自分に飽きちゃったのかなとか。あんなに健気に好きになってくれるなんて幸せなことだぞ」

「それはそうだけどさ」

そんなやりとりをしていたら横に人影を感じた。

 

「純くん」

当の本人、三村だった。話を聞かれていたのか?

「ごめんね、休憩中。課長が呼んでるよ。急ぎの案件みたい」

「そうか、すぐ行くわ」

何事もなかったように答える。急ぐようにしてその場を去るが気まずさが残ったままだ。

 

課長に呼ばれた後、急な資料作りが必要になり取りかかっていたら午後の時間はあっという間だった。忙しいのはありがたい。現実逃避ができる。

昼間にさぼった分も加えて残業する羽目になり、珍しく時計は8時をまわっている。

同じ部署のメンバーが次々と出ていき、帰り支度に時間がかかっていたら三村と二人になってしまった。

何となく気まずい。

早く帰ろうとしたところで、フロアに誰もいないことを確認した三村が言う。

「私の噂してたでしょ」

肯定も否定もできない。

「純くん、私のこと嫌いにならないで」

俺は三村を見るが真面目な表情だった。思わず声が出ない。

目が潤んで泣きそうだ。

こんな表情をさせている原因は間違いなく俺だろう。

三村は返事をしない俺から目を逸らさずにはっきりと言った。

「純くん、加澄さんのことはもうあきらめて」

 

 

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恋人・三村から人事部長と加澄が婚約すると聞かされた純。最初から自分は利用されていたのだと知りショックを受ける…。