NOVEL

Second Woman vol.3~好意と思惑の狭間~

残業中に再度休憩室で会い、衝動的に車で彼女を送ることになった純。彼女が海外に異動していた話を聞くこととなり…。

 


前回:Second Woman vol.2~惹かれてはいけない女性~

はじめから読む:Second Woman  vol.1~その後ろ姿にただ惹かれた、それだけの筈だった~

 

運転中なので目を合わせることはできないが、じっとこちらを見ているのがわかる。

「海外に三年間いたけど、帰ってきたことでまた噂になってるのかもね。私と人事部長の話」

相手は人事部長か。

この間二人がオフィスを出ていくのをそういえば見かけた。あれを三村が見て過去の話をしたんだったな。でも確か人事部長は独身だった筈だが。

 

「正直に言いますけど、人づてで聞きました。でも変な風には聞いてないですよ…なんていうか、そういうことがあったらしいっていうか」

おそらくそれが起こった当時、俺は他の支社に居て知ることがなかった。

「そっか。噂の内容までわからないけど、妻子持ちの人事部長と関係があって本社に居られなくなった時に海外赴任の話があったのよ。前々から海外に行くことを希望していたとは言え、そんなタイミングでね」

「そうだったんですね…でも今人事部長は独身ですよね?」

「そうよ。私のせいでね」

言葉を継げずにいると彼女の最寄り駅の前まで来てしまっていた。

もっと話を続けたかったが着いてしまってはしょうがない。

ロータリーに車を止める。

 

 

「ありがとう。シャツはまた後日ね」

さっと車を降りる彼女の背中をずっと追ってしまう。

なんだろう。この先も彼女とは関わっていくような、きっと追ってしまうようなそんな気がしていた。

 

「やっぱり綺麗だよなー辻本加澄さん」

他チームの石田だ。

彼女と資材調達の件で同じチームであるらしく、ミーティングから戻ってきたばかりだった。

通りすがりに俺に話しかけてくる。

 

「加瀬は知ってるか?海外赴任から戻ってきた辻本さん。今日プレゼンしてたんだけどさ、きびきびしてるけど厳しくないっていうか、時々にこって微笑みながら話を進めるっていうか…」

にやにやしながら石田は言う。

「いやぁ、あんな魅力的な人と同じチームとは幸せだわ、俺」

「石田、お前妻子持ちだろ。浮かれたこと言うなよ」

ちょっとした嫉妬もあったのだろうか。少し強い口調になってしまった。

石田は俺の言葉に言い返す。

「まあまあそう言うなよ。大体ああいう凛とした綺麗な女性、加瀬の好みだろ」

日中の職場でする話じゃないだろう、そう言おうとしたところで隣の三村が話に入ってくる。

「へぇ、純くんてああいうお姉さんぽい人が好きなんだ?」

「そうそう、こいつさ、昔からキレイめの彼女ばっかりでさ」

「ほっとけ」

話が終わらなさそうなので早々に席を立つ。

 

後ろではまだ石田と三村が盛り上がっているのが聞こえた。

今日は上司がフロアにいないからそんな軽口を叩けるのだろう。

‘ああいう凛とした綺麗な女性、加瀬の好みだろ’

休憩室に向かいながら石田の声が反芻する。昔から付き合いの長い同僚というのはたまに厄介だ。

他社の女性との飲み会に一緒に行ったこともあるし、昔の彼女も知っていたりする。

まぁそれはお互い様だが。